パート労働者の有給|付与日数や賃金の計算方法を解説

2024年06月04日
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パート労働者の有給|付与日数や賃金の計算方法を解説

令和2年(2020年)国税調査によると、埼玉県の就業者のなかで「パート・アルバイト・その他」の男性は13.6%、女性は40.5%でした。

越谷市でも少なくない方がパートやアルバイトに従事していると推測されますが、店舗や事務所、中小企業の経営者のなかには、パートタイムの従業員を雇用されている方も多いのではないでしょうか。

パートやアルバイトの従業員を雇用する際、有給の付与や賃金計算において、注意すべき点がいくつかあります。意図せぬ違法行為とならないよう、把握しておくことが大切です。

この記事では、パート・アルバイト従業員の有給日数や給与の計算方法、違反した場合の罰則などについて、ベリーベスト法律事務所 越谷オフィスの弁護士が解説します。

1、パート労働者に有給が付与される要件とは?

  1. (1)年次有給休暇の取得要件とは?

    有給(正式には「年次有給休暇」といいます)は、労働基準法においてルールが規定されていますこの規定の対象には、従業員だけでなくパートやアルバイトも含まれます

    年次有給休暇は、以下の2つの要件を満たす労働者が請求できます(労働基準法第39条)。

    • 雇い入れの日から起算して「6か月間」継続勤務する者
    • 全労働日の8割以上出勤した者


    年次有給休暇は、労働者が請求する時季に与えることが原則です。そのため、労働者が具体的な日を指定した場合には、「時季変更権」による場合を除き、その日に有給を与えなければなりません。

    時季変更権とは、「事業の正常な運営を妨げる場合」に、従業員からの有給希望日を会社(使用者)が変更できる権利です。ただし会社が時季を指定する際には、従業員の意見を聞いて、できる限り従業員の希望に沿った時季になるように努めなければなりません。

  2. (2)パートにも年5日の時季指定義務あり

    短時間勤務のパートやアルバイト従業員であっても、勤務歴が「3年半」以上であれば、年間「10日」の有給休暇付与の対象者となります。

    また会社には、年次有給休暇を年間10日以上付与した従業員に対して、付与した日(基準日)から1年以内に「5日」取得させる義務があります(労働基準法第39条7項)。

    対象となる労働者には、パートやアルバイトの短時間勤務の従業員のみならず、管理監督者、有期雇用労働者も含まれています。

    会社がこれらの義務に違反して、年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合には、会社に「30万円以下の罰金」が科されます(労働基準法第120条1号、39条7項)。

2、パート労働者の有給を計算する方法

ここからはパート・アルバイト労働者の具体的な有給休暇の日数について解説していきます。

  1. (1)パート・アルバイトが付与される有給の日数は?

    前述の有給休暇取得の要件を満たした従業員は、以下の表のように1年を経過するごとに勤続年数に応じた有給休暇を取得することができます。

    勤続年数 0.5年 1.5年 2.5年 3.5年 4.5年 5.5年 6.5年以上
    付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日


    また、パートやアルバイトの従業員であっても、週所定労働時間が「30時間以上」または所定労働日数が「5日以上」の従業員であれば上記の表に示した日数が与えられることになります(労働基準法第39条3項、同法施行規則第24条の3)。

    一方、所定労働時間が「30時間未満」で、かつ所定労働日数が「4日以下」の従業員は、以下の表に応じた有給日数が与えられます。

    週所定 1年間の所定 勤務年数
    労働日数 労働日数 0.5年 1.5年 2.5年 3.5年 4.5年 5.5年 6.5年以上
    4日 169日から216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
    3日 121日から168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
    2日 73日から120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
    1日 48日から72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

    参考:東京労働局「労働基準法 有給休暇編」

  2. (2)所定労働日数が定まらない訪問介護職の場合

    訪問介護労働者には、「短時間労働」「臨時の勤務形態」「月・週・日の所定労働時間が非定型的に特定される勤務形態(非定型的パートタイムヘルパー)」などさまざまな働き方が存在しています。

    こうした非定型的パートタイムヘルパーなどについては、有給休暇を計算するための所定労働日数を算出しにくいケースも少なくありません。そこで、基準日直前の実績を考慮して所定労働日数を算出できるとされています(平成16年8月27日 基発第0827001号「訪問介護労働者の法定労働条件の確保について」)。

    たとえば、雇い入れの日から起算して6か月後に付与される年次有給休暇の日数については、過去6か月の労働日数の実績を2倍したものを「1年間の所定労働日数」とみなして判断することができます。

3、パート労働者が有給休暇を取得した際の賃金を計算する方法

パート・アルバイト従業員が有給休暇を取得した場合、その期間の賃金の計算方法については、以下のように「平均賃金で計算する」、「通常の賃金で計算する」、「標準報酬日額で計算する」という方法があります。

  1. (1)平均賃金で計算する

    平均賃金は、年次有給休暇の賃金の算定のほか、解雇予告手当、休業手当、災害補償などの算定のために使用されます。

    平均賃金の算定方法については、労働基準法第12条1項に以下のように規定されています。

    平均賃金=算定すべき事由の発生した日以前「3か月間」の賃金総額÷その期間の総日数


    年次有給休暇の賃金を算定する場合、「算定すべき事由の発生した日」とは、年次有給休暇を与えた日のことをいいます。2日以上のときは最初の日を指します。

  2. (2)通常の賃金で計算する

    所定労働時間に働いた場合の通常の賃金をもとに計算する方法です。「賃金=所定労働時間×時給」などで計算することができます。また、パート・アルバイトでシフトが決まっている従業員の場合には、勤務予定シフト時間分で計算することもできます。

  3. (3)標準報酬日額で計算する

    標準報酬日額とは、社会保険料決定の基礎になる標準報酬月額から日割りの金額を算出したものです。標準報酬日額により計算できるのは、パート・アルバイトが会社の健康保険に加入しており、労使協定が取り交わされている場合です。

4、パート労働者の有給を計算する際の注意点

パート・アルバイト従業員が、業務上負傷・疾病にかかり療養のために休業した期間、育児休業、介護休業をした期間・産前産後休業をした期間については、「出勤したものとみなされる」ため出勤日数として有給休暇の付与日数を計算しなければなりません(労働基準法第39条10項)。

会社がパート・アルバイトの有給の取得を拒否したり、有給分の給与を減らしたりすると、「6か月以下の懲役」または「30万円以下の罰金」が科されることになるため(労働基準法第119条1号、39条)、注意が必要です。

また、有給休暇には時効があり、有給休暇を与えた日から「2年」で時効消滅します。与えた日から1年で使い切れなかった有給休暇については翌年に繰り越し、新たに与えられた休暇日数に加算しますが、さらに1年間使用しなかったときは時効により消滅することになります。

5、まとめ

パートやアルバイトの従業員が有給休暇を取得するには一定の要件があり、所定労働時間と勤務年数によって取得できる有給休暇が変わります。

また、訪問介護などの非定型的パートに対しても、実績から所定労働日数が算出できるため、それに基づく有給を付与しなければなりません。不当に有給を付与しなかったり有休分の給与を減らしたりする行為は罰則やペナルティーが科されるおそれがあるため、適切な対応に努めましょう。

従業員に対する有給休暇の付与や、賃金の計算について悩みや不安をお持ちの場合は、まずはベリーベスト法律事務所 越谷オフィスの弁護士にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています