妊娠中に別れると養育費や慰謝料はどうなる? 弁護士が解説

2025年05月28日
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妊娠中に別れると養育費や慰謝料はどうなる? 弁護士が解説

令和2年の埼玉県の母子世帯数は3万2130組、父子世帯数は4459組、合計で3万6589組に上ります。埼玉県が公開している「令和2年国勢調査速報結果」によると、当時の埼玉県全体の世帯数は316万2643世帯でした。つまり、100世帯のうち1世帯以上がひとり親世帯であることがわかります。

妊娠中や出産後にひとり親になるケースは決して珍しくありません。しかし、妊娠中に交際相手と別れてしまうと、養育費や慰謝料、認知の問題など、法律的に解決しなければならない課題が多く生じます。

この記事では、妊娠中にパートナーと別れる場合の法律的なポイントをわかりやすく解説します。養育費や慰謝料をめぐる具体的な手続き、そして弁護士に相談するメリットについてご紹介します。誰にも相談できずに悩んでいる方の手助けになれば幸いです。

出典:「国勢調査 令和2年国勢調査 人口等基本集計(表番号16-4)」(埼玉県)


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1、妊娠中に別れた場合、養育費はどうなる?

未婚で妊娠中に交際相手と別れた場合でも、母親には父親である交際相手に対して子どもの養育費を請求する権利があります。ただし、そのためには法律上の「父子関係」を確立することが必要です。この関係を確立するには、父親が子どもを認知する手続きを行わなければなりません。

  1. (1)認知が必要な理由

    未婚の父親は、母親とは異なり、子どもが生まれても自動的に法的な親子関係が生じるわけではありません。

    父親が子どもを認知することで、初めて法的な親子関係が成立します。これにより、父親には養育費を支払う義務が生じ、子どもは父親の財産を相続する権利を得ます。

  2. (2)認知の方法

    認知には以下の2種類があります。

    ① 任意認知
    任意認知とは、父親が自ら認知届を提出し、子どもとの親子関係を法律的に認める方法のことです。この手続きは父親の意思によって進められるため、母親にとって負担が比較的少なく済むという特徴があります。
    認知届の提出先は、父親または子どもの本籍地、もしくは父親の住民登録がある役所となります。手続きには、認知届や父親の身分証明書などの書類が必要です。
    なお、妊娠中の認知(胎児認知)の場合は、母親の同意書を添付する必要があります。

    ② 強制認知
    父親が認知に応じない場合、家庭裁判所に認知調停を申し立てます。調停で話し合いがまとまらなければ裁判へ進み、DNA鑑定などを用いて父子関係を証明します。裁判所が認めれば、父親に認知を義務付けることができます。
  3. (3)養育費の支払いを確実にするためにするべきこと

    父親が子どもを認知した場合、養育費を求めることができます。しかし、養育費の支払いを口約束のままにしておくと、トラブルに発展するリスクがあるでしょう。そのため、強制執行の認諾文言を盛り込んだ公正証書を作成しておくことをおすすめします

    公正証書には、養育費の金額や支払い方法、期限などの具体的な内容を記載します。これにより、万が一支払いが滞った場合でも強制執行が可能となり、裁判所を通じて給与や財産を差し押さえることができます。

2、養育費の金額と決め方

養育費は、子どもの生活を守るために必要な費用です。未婚か既婚かにかかわらず、その金額に差はありません。子どもの成長を支えるためには、双方が責任を果たし、現実的で公平な金額を決めることが大切です。

  1. (1)養育費の金額は話し合いで決めるのが基本

    養育費の金額は、まず親同士の話し合いで決定します。話し合いでまとまれば、裁判所を通さずに合意内容を決めることができます。この場合、金額や支払い方法に特別な制限はなく、双方が納得できればどのような取り決めでも構いません。

    ただし、未婚の状況で、どの程度の金額が妥当なのかを判断するのは簡単ではないでしょう。そのような場合は、裁判所が作成し公表している「養育費算定表」を参考にして養育費の金額を算出すると良いでしょう。この算定表を用いると、養育費を支払う側と受け取る側の収入、子どもの人数や年齢などを考慮した、公平で客観的な金額が設定できます。たとえば、収入が多い場合は支払う養育費も高くなり、逆に収入が少なければ金額も低くなる仕組みです。

    算定表はホームページ等で公開されているので、話し合いの参考資料としても活用できます。調停を起こす前に、算定表を使って冷静に話し合うことが解決への近道になるかもしれません。

    ベリーベスト法律事務所では、養育費算定表を元にした「養育費計算ツール」をご用意しています。無料でご使用いただけますので、ぜひご活用ください。

  2. (2)話し合いが難航する場合には家庭裁判所で取り決める

    双方の意見が折り合わない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てるのが一般的です。調停では、中立の立場にある調停委員が仲介役を務め、双方の意見を公平に聞きながら、合意に向けた話し合いを進めます。

    調停を経ても合意に至らなかった場合は調停不成立となり、自動的に審判手続きが開始されます。審判手続きでは、裁判官が一切の事情を考慮して養育費を取り決めます。

3、妊娠中に別れた場合に慰謝料請求をできる可能性があるケース

妊娠中に交際相手と別れた場合、慰謝料を請求できるかどうかは、状況によって異なります。妊娠した事実だけで慰謝料を求めるのは難しいですが、ケースによっては請求が認められる可能性があります。

  1. (1)正当な理由なく婚約解消されたケース

    交際相手と婚約しており、相手が正当な理由がなく一方的に婚約を解消した場合は、慰謝料を請求できる可能性があります。
    なお、婚約破棄に妊娠や中絶が関わっている場合は、慰謝料の金額が高額になる可能性が高まります。相手の行為による精神的苦痛がより大きいと判断されるためです。その他、婚約期間が長い場合、婚約破棄をした相手の対応が不誠実である場合なども、同様に判断される可能性が高いと言えるでしょう。

    ただし、婚約が客観的に成立していたことが必要です。たとえば、結婚指輪や婚約指輪を交換している、結婚式や新婚旅行の準備をしている、お互いの両親に結婚のあいさつを済ませているといった状況は、婚約が客観的に成立している証拠となり得ます。

  2. (2)相手が既婚者であり、だまされていたケース

    婚約者が独身だと偽っていた場合、「貞操権の侵害」として慰謝料を請求できる可能性があります。このようなケースでは、相手が独身であると信じる理由を裏付ける証拠を集めることが重要です。

    たとえば、相手が独身であることを明言したメールやSNSのやり取り、結婚をほのめかす内容のメッセージなどが有力な証拠になります。これらの証拠があれば、相手の発言や行動が意図的な欺瞞(ぎまん)であったことを示すことができ、慰謝料を請求する際の根拠として有効です。

    さらに、妊娠した場合には、身体的・精神的な負担が増えることから、慰謝料が増額される可能性もあります。

  3. (3)性行為を強要されていたケース

    そもそも相手との間にトラブルを抱えており、性行為も合意に基づくものではなく、暴力や脅迫で強要されたようなケースでは、それ自体が「不同意性交等罪」という重大な犯罪に該当する可能性があります。この場合、相手には刑事罰が科される可能性があり、さらに被害者は慰謝料を請求できる可能性があります。
    同意のない性行為によって妊娠している場合は、被害者が受けた身体的・精神的負担がより大きくなるため、慰謝料を増額させる事情になることがあります。

    ただし、刑事罰が科されたからといって、慰謝料が自動的に支払われるわけではありません。慰謝料は民事上の請求となるため、別途手続きを進める必要があることに注意が必要です。

4、妊娠中に別れた場合に、弁護士へ相談するべき理由

妊娠中に父親となる相手と別れた場合、不安やストレスが大きくなるのは当然です。特に未婚のまま出産を控えている方にとっては、認知や養育費の問題が複雑で、何をすべきか迷ってしまうこともあるでしょう。このような状況で、弁護士に相談することには多くのメリットがあります

  1. (1)相手との交渉を任せられる

    妊娠中にもめている相手と話し合いを進めるのは、精神的にも肉体的にも大きな負担となります。このような状況では、弁護士を代理人として立てることが有効です。弁護士が間に入ることで、相手との直接的なやり取りを避けられるだけでなく、冷静で効果的な交渉が可能になります。

    万が一話し合いがまとまらない場合でも、弁護士から継続的なサポートを受けられるため、安心して問題解決に向けて進むことができる点も大きなメリットです。

  2. (2)認知の手続きをスムーズに進められる

    未婚で出産する場合、父親に認知してもらうことが、子どもの権利を守る上で非常に重要です。認知が行われることで、子どもは父親の相続権を得るほか、養育費の請求が可能になります。
    しかし、父親が認知を拒む場合、話し合いだけで解決するのは難しくなるでしょう。
    弁護士に相談することで、交渉を任せることができるほか、法的手続きなどについても、サポートしてもらえます

  3. (3)慰謝料請求できるか法的に判断してもらえる

    相手に慰謝料を請求できるかどうかは、法律に基づいて判断する必要があります。弁護士に相談することで、具体的な状況を整理し、慰謝料請求が可能かどうか適切に判断してもらえます。さらに、請求額の目安や証拠の集め方についてもアドバイスを受けられるため、スムーズな対応が期待できます。

  4. (4)公正証書の作成のサポートを受けられる

    強制執行認諾文言付の公正証書の有効性は前述したとおりですが、公正証書には、養育費や慰謝料の金額、支払い方法、期限などを具体的に記載する必要があります。弁護士は公正証書の作成をサポートし、内容の検討や公証役場での手続きを代行してくれるため、確実な内容で証書を作成することができます。

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5、まとめ

妊娠中に、相手と別れた場合、認知、婚約破棄、養育費等の問題と向き合うことになります。しかし、これらは法律の知識が求められことにくわえ、感情的な対立も起きやすいので、大きな負担になるでしょう。

ベリーベスト法律事務所 越谷オフィスには、男女問題の対応実績な豊富な弁護士が在籍しています。弁護士のサポートやアドバイスを受けることができれば、安心して問題解決に取り組むことができますので、お一人で悩まず、ぜひご相談ください。

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