商標登録をするメリットは? その必要性についてわかりやすく解説

2023年03月23日
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商標登録をするメリットは? その必要性についてわかりやすく解説

特許庁のデータによると、2014年から2016年の3年間における埼玉県内の年間平均商標出願件数は2,255件で、47都道府県中8位でした。

自社の商品名やサービス名、ロゴやマークなどについては、他の企業にまねや剽窃(ひょうせつ)をされてしまう前に、早い段階で商標登録出願を行ったほうがよいでしょう。商標登録出願の手続きについてわからないことがあれば、弁理士や弁護士にご相談ください。

本コラムでは、商標登録のメリットや商標登録出願しない場合のリスク、登録できない商標の種類や登録手続きの詳細などについて、ベリーベスト法律事務所 越谷オフィスの弁護士が解説します。

1、商標登録を受けるメリット

会社として新しい商品やサービスをリリースした場合は、できるだけ早いうちに、その名称(文字商標)やロゴ(ロゴ商標)やマークなどについて商標登録出願を行うことをおすすめします。
以下では、商標登録を受けることの主なメリットを解説します。

  1. (1)登録商標を独占的に使用できる

    商標権者は、指定商品または指定役務について、登録商標を使用する権利を専有します(商標法第25条)。

    指定商品・指定役務とは、商標登録の出願を行う際に、その商標を使用するものとして指定された商品やサービスのことをいいます。
    商標権者は、同種の商品やサービスにおける登録商標の使用を独占して、自社の商品やサービスの差別化を図ることができます。

    また、商標権者以外の者は、以下の行為をすることが禁止されます(商標法第37条第1号)。

    • ① 指定商品・指定役務について、登録商標に類似する商標を使用すること
    • ② 指定商品・指定役務に類似する商品・役務について、登録商標を使用すること
    • ③ 指定商品・指定役務に類似する商品・役務について、登録商標に類似する商標を使用すること


    上記のような紛らわしい行為も禁止されるため、商標を登録することで、「この名称やロゴは、自社の商品・サービスを表現している」ということが明確化されるのです

  2. (2)登録商標の使用を第三者に許諾して、ライセンス収入を得られる

    商品やサービスの名称・ロゴ・マークなどにブランド力がある場合、商標登録をしたうえで第三者に使用を許諾すれば、ライセンス収入を得ることができます。

    特にキャラクタービジネスなどを展開する場合は、キャラクターの名称などについて商標登録を受けておくことで、人気が出た際にライセンス契約の申し込みを受けやすくなります

  3. (3)企業としての信用力が向上する

    知名度の高い登録商標を有していることは、企業としての対外的な信用力向上につながります。

    信用力が上がることで、金融機関から融資を受けやすくなったり、大規模な取引を受注できる可能性が上がったりするなど、会社のさらなる成長が見込めるでしょう

2、商標登録を受けないことにより、企業が負うリスク

自社商品・サービスの名称・ロゴ・マークなどにつき、商標登録を受けない場合は、以下のリスクを負うことになります。

  1. (1)先に商標登録をされて、商標を使えなくなってしまう

    商標登録では、純粋な「先願主義」が採用されています(商標法第8条)。

    先願主義とは、一番先に出願を行った人だけが商標登録を受けられる、という考え方です。そのため、たとえ自社が先に使っていた商標であっても、他社が先に出願を行えば、他社に商標登録が認められてしまいます。

    他社が商標登録を受けた商標については、自社で使うことができなくなってしまいます。例外的に先使用権(商標法第32条)が認められるケースもありますが、その要件は極めて厳しいです。
    すでにリリースしていた商品・サービスの商標が使えなくなると、回収や利用者への周知などに関して膨大な手間が発生します。
    また、利用者や一般消費者からの評判が失墜するおそれもあるのです。
    このような事態を防ぐため、自社商品・サービスの名称・ロゴ・マークなどについては、早い段階で商標登録出願を行ったほうがよいでしょう

  2. (2)商標権侵害による差止請求・損害賠償請求を受ける

    他社の商標登録が認められたにもかかわらず、登録商標や類似の商標を自社商品・サービスに使い続けていると、商標権者から差止請求や損害賠償請求を受ける可能性があります(商標法第36条、民法第709条)。

    差止請求や損害賠償請求をされると、商品・サービスの販売停止や巨額の金銭の支払いなど、自社は大きなダメージを受けることになります。
    請求を避けるためには、前もって商標の使用を停止する必要がありますが、市場での認知度が確立された商標を捨てることは、経営上の多大なリスクとなるでしょう。
    したがって、新たに商品やサービスをリリースする際にも、商標登録出願を行うことが重要になるのです

3、商標登録できない商標の例

商標登録は、すべての商標について認められるわけではありません。
以下では、商標登録が認められない事例について解説します。

  1. (1)自社と他社の商品・サービスを区別できないもの

    商標を付す目的は、自社の商品・サービスを他社のものから区別する点にあります。
    以下に挙げるような商標については、自社と他社の商品・サービスを区別できないものであるため、商標登録が認められません(商標法第3条第1項)。

    • (a)商品・サービスの普通名称のみを表示する商標
      例:アルミニウムの商品名として「アルミニウム」を商標出願した場合
    • (b)商品・サービスについて慣用されている商標
    • (c)商品の産地・販売地・品質等、またはサービスの提供場所・質等のみを表示する商標
      例:銀座の飲食店で使用する商標として「東京銀座」を商標出願した場合
    • (d)ありふれた氏・名称のみを表示する商標
      例:「山田商店」を商標出願した場合
    • (e)きわめて簡単かつありふれた標章のみからなる商標
      例:アルファベットの「X」を商標出願した場合
    • (f)その他、誰の商品・サービスであるかを認識することができない商標
      例:標語(キャッチフレーズ)を商標出願した場合
  2. (2)公益性に反するもの

    以下の商標については、公益性に反するものであるため、商標登録が認められません(商標法第4条第1項第1号~第7号、第9号、第16号、第18号)。

    • (a)国旗・菊花紋章・勲章または外国の国旗と同一・類似の商標
    • (b)外国・国際機関の紋章・商標等のうち経済産業大臣が指定するもの、赤十字の名称・マークと同一・類似の商標等
    • (c)国・地方公共団体等を表示する著名な標章と同一・類似の商標
    • (d)公の秩序・善良な風俗を害するおそれがある商標
    • (e)商品の品質・サービスを誤認させるおそれのある商標
    • (f)博覧会の賞と同一・類似の商標
    • (g)商品・商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標
  3. (3)他社の登録商標や著名な商標等と紛らわしいもの

    以下の商標については、他社の登録商標や著名な商標等と紛らわしいものとして、商標登録が認められません(商標法第4条第1項第8号、第10号~第12号、第14号、第15号、第17号、第19号)。

    • (a)他人の使命・名称、著名な芸名・略称等を含む商標
    • (b)他人の広く認識されている商標(周知商標)と同一・類似の商標であって、同一・類似の商品・サービスに使用するもの
    • (c)他人の登録商標と同一・類似の商標であって、指定商品・指定役務と同一・類似のもの
    • (d)他人の商品・サービスと混同を生ずるおそれのある商標
    • (e)他人の周知商標と同一・類似であって、不正の目的により使用する商標
    • (f)他人の登録防護標章と同一の商標
    • (g)種苗法で登録された品種の名称と同一・類似の商標
    • (h)真正な産地を表示しないぶどう酒・蒸留酒の産地の表示を含む商標

4、商標登録を行う際の手続き

以下では、商標を出願して登録する手続きの流れを解説します。

  1. (1)商標登録出願

    まずは、特許庁に商標登録願を提出して、出願を行いましょう(商標法第5条)。
    窓口で提出するほか、インターネットを通じた出願することも可能です

  2. (2)審査官による出願審査、登録or拒絶の査定

    特許庁が商標登録出願を受理した後には、審査官によって出願審査が行われます(商標法第14条)。

    審査官は、「商標登録できない商標の例」に該当するなどの拒絶理由が存在するか否かを審査します
    原則的に、拒絶理由が存在する場合には商標登録は拒絶されますが、そうでなければ商標登録をすべき旨という査定が行われます(商標法第15条、第16条)。

  3. (3)登録料の納付・商標権の設定登録

    商標登録をすべき旨の査定が行われると、査定謄本が出願者に送達されます。
    出願者は、原則として送達を受けた日から30日以内に、所定の登録料を納付しなければなりません(商標法第41条第1項)。

    登録料の納付があった場合は、商標権の設定登録が行われます(商標法第18条)。
    商標権の存続期間は設定登録の日から10年間であり、その後は期間満了ごとに更新することができます(商標法第19条第1項、第2項)。

5、まとめ

自社の商品名やサービス名などを商標登録すると、その商標を独占的に使用できるほか、他社に使用を許諾してライセンス料を得ることもできます。
その一方で、商標登録を怠っていると、他社が先に商標登録出願をしてしまい、商標の使用ができなくなってしまうリスクがある点に注意してください。

ベリーベスト法律事務所グループには、弁護士とともに弁理士が在籍しており、商標権に関するご相談も承っております
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