企業担当者は要注意! パクリ屋(取り込み詐欺)とはなにか?
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何度か取引をしている企業から大口の取引を持ちかけられた場合、売り上げが欲しい営業担当者としては、取引を成立させるために、その取引に応じることがあるでしょう。
取引先の企業がまともな企業であれば、何の問題もありませんが、大量の商品を仕入れたまま代金を支払わないという、いわゆる「パクリ屋(取り込み詐欺)」であった場合には、多大な損害が生じてしまいます。
本コラムでは、パクリ屋の被害に遭わないために気を付けるポイントや、被害に遭った場合の対応について、ベリーベスト法律事務所 越谷オフィスの弁護士が解説します。
1、パクリ屋(取り込み詐欺)とは
まず、「パクリ屋」の概要と、その手口について解説します。
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(1)パクリ屋とは
パクリ屋とは、代金を支払う意思も能力もないのに、それらがあるかのように装って商品を受け取りながら、その代金を支払わないという詐欺の手法です。「取り込み詐欺」ともいいます。
被害額が少額であれば何とかなるかもしれませんが、大量の商品を一度にだまし取られてしまうと、経営が傾くほどの被害が生じる可能性もあるでしょう。 -
(2)パクリ屋の手口
パクリ屋は、以下のような手口で、商品をだまし取ろうとしてきます。
① 少額の現金取引からスタートする
いきなり見ず知らずの相手から大口の取引を持ち掛けられたとしても、これまで取引がなく信頼関係のない相手では、警戒して取引に応じない人は多いと思います。
そのため、パクリ屋の手法を用いる人々は、まず少額の現金取引からスタートして、徐々に信頼関係を築いていきます。
そして、ある程度の信頼関係が築けた段階で、大口の与信取引を持ちかけてくるのです。
これまで小口の現金取引が主体であった取引先から、いきなり大口の与信取引を提案された場合には、パクリ屋かもしれないと思って警戒してください。
② 販売先に大手の名前を出す
パクリ屋の場合、販売先に商品の販売をするという口実で、商品の仕入れを行おうとします。
その際には、取引先から信用を得るために、大手の販売先の名前を出すことがあります。
しかし、商品をだまし取るのが目的なので、実際には大手の販売先との取引実態など存在しないのです。
③ 換金性の高い商品をターゲットにしている
パクリ屋によってだまし取られた商品は、転売や換金などによってすぐに現金に換えられてしまいます。そうして、痕跡を残さないようにするのです。
日用雑貨・家電製品・衣類・食料品・商品券など、流通性や換金性の高い商品を扱っている企業では、特にパクリ屋の被害に遭う可能性が高いといえますから、注意してください。
2、被害に遭わないために気を付けるべき点
パクリ屋の被害に遭わないようにするためには、以下の点に気を付ける必要があります。
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(1)商業登記の確認
取引を行う相手が実体のある企業かどうかは、商業登記を取得することで確認することができます。
登記簿に記録されている事項を証明した書面(これを「登記事項証明書」といいます。)であれば、誰でも交付を受けることができます(商業登記法10条1項)。
商業登記のされていない企業であれば、架空の企業の可能性があるため、パクリ屋である可能性も高くなります。
ただし、取り込み詐欺を行うために会社を設立している可能性もあるため、「商業登記がされているから安全な企業である」とは断定できません。
「会社成立の年月日」という欄を見て、その会社がいつ設立されたのかを確認しましょう。
特に、設立して間もない会社であれば注意しましょう。
また、設立から相当程度期間が経過している会社であったとしても、休眠会社を買い取っている可能性があります。
万全を期すため、「最近になって社名や住所、代表者・役員の変更がなされていないかどうか」までチェックすることをおすすめします。
登記された事項に変更があったかを知りたい場合には、その会社の「履歴事項全部証明書」を取得して、確認すると良いでしょう。 -
(2)会社所在地への訪問
商業登記がされていたとしても、登記上の住所には会社としての実体がないことがあります。
商談を進める際には、相手の会社を訪問して、会社としての実体の有無を確認しましょう。
もし、会社への訪問を提案した際に、何らかの理由をつけて喫茶店やファミリーレストランなどでの打ち合わせに変更し続け、会社への訪問を拒否する場合には、パクリ屋である可能性が高いといえます。 -
(3)長期休暇前の大量発注には注意が必要
パクリ屋は、被害に気付くのを遅らせるために、お盆や正月など長期休暇前に大量発注を行い、休暇に入る前の商品到着を希望して取引を急(せ)かしてくることがあります。
そうして、休暇明けにはパクリ屋との連絡がとれなくなり、パクリ屋と気づいた頃には事務所がもぬけの殻になっていた、という事態もあり得るのです。 -
(4)関係性が薄い相手との与信取引には応じない
大口の取引を持ちかけられると、営業成績を上げたい営業担当者としては、つい契約に飛びついてしまいたくなることもあるかと思われます。
しかし、相手の企業がパクリ屋の可能性もありますので、あまりにも条件が良すぎる契約であった場合には、パクリ屋かもしれないと思って警戒しながら慎重に取引を進めていく必要があります。
少しでも怪しいと思った場合には、「与信管理を徹底して、手形や後払いなどの与信取引に応じない」といった対応を行うようにしましょう。
3、被害に遭った場合の対応
もしパクリ屋の被害に遭った場合は、以下のような対応を検討しましょう。
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(1)警察への被害届の提出
パクリ屋によって大量の商品をだまし取られてしまった場合には、詐欺罪が成立する可能性がありますので、警察に被害届を提出しましょう。
同様の手口で多数の被害者がいるような場合には、警察も犯人逮捕に向けて動いてくれる可能性がより高くなります。
警察にスムーズに被害届を受理してもらうためにも、パクリ屋との取引の証拠を一緒に提出できるように準備をしておきましょう。
警察の捜査の結果、犯行グループが逮捕された場合、詐欺被害に遭った商品が残っていれば、その返還を受けることができる可能性があります。
しかし、既に転売や換金をされてしまった後では、被害の回復は困難になってしまいます。したがって、パクリ屋の被害に遭ったことに気付いた場合には、できるだけ早めに警察に相談することが大切です。 -
(2)弁護士への相談
警察の捜査は、あくまでも刑事手続上のものになります。
刑事手続の目的は「犯人を検挙して、犯罪事実に応じた刑罰を科すこと」であり、被害者となった人々の被害を回復することではありません。
被害に遭った商品を取り戻したり、損害賠償を請求したりするためには、被害者の側から民事上の手続を行う必要があるのです。
パクリ屋に対して民事上の手続を行う場合には、弁護士にご相談ください。
弁護士であれば、会社に代わってパクリ屋と示談交渉を行うことができます。
また、パクリ屋が取り込み詐欺を認めない場合や被害弁償に応じない場合には、裁判を起こすことで被害の回復を図ることもできます。
4、企業トラブルについては弁護士へ
企業トラブルについては、弁護士に相談をすることをおすすめします。
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(1)トラブルを未然に防止することができる
企業間の取引では、個人間の取引に比べて扱う金額が高額になるため、トラブルや詐欺などが発生すると、損害額が甚大なものとなる可能性が多々あります。
また、トラブルの内容によっては、風評被害が生じて、企業の売り上げが減少してしまうなどのリスクも存在します。
弁護士は、トラブルを未然に防止するための予防策について、企業にアドバイスすることができます。 -
(2)顧問弁護士を利用すればいつでも気軽に相談ができる
顧問弁護士を利用していない企業では、顧問弁護士の利用をぜひおすすめします。
顧問弁護士がいれば、いつでも気軽に、弁護士に相談することができます。
また、トラブルが深刻化する前に、適切な対処法を知ることもできるでしょう。
さらに、弁護士事務所での面談だけでなく、メールやオンライン会議など会社の状況にあわせた方法によって相談できるため、疑問が生じた場合にはすぐに相談することができます。
5、まとめ
パクリ屋の手口は「少額の現金取引からスタートして、徐々に信頼を築いていき、大口の与信取引によって大量の商品をだまし取る」というのが一般的です。
パクリ屋の被害に遭わないようにするためには、弁護士によるアドバイスが有効となります。
パクリ屋についてお悩みの方や、その他の企業間トラブルでお困りの方は、ベリーベスト法律事務所までご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています