外国人を雇用する際に押さえておくべき法令と注意すべきポイント
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令和4年7月1日の越谷市における外国籍の市民数は7276人であり、市民人口の2.11%でした。
日本国内の労働人口が減少するなかで、優秀な人材を確保するために、外国人の雇用を検討している経営者の方も多くおられるでしょう。しかし、外国人の雇用に関しては「法律的にハードルが高いのではないのか」「どのように対応したらいいのかわからない」といった不安を感じる面も多いと思われます。
本コラムでは、外国人を雇用するにあたって押さえるべき法令や注意をするポイントなどについて、ベリーベスト法律事務所 越谷オフィスの弁護士が解説いたします。
1、外国人を雇い入れするときに押さえておくべき法律
最初に、外国人を雇い入れる場合に押さえておく必要がある法律を解説します。
前提として、労働関係法令や社会保険関係法令は日本人と同様に外国人にも適用されます。
したがって、労働基準法や健康保険法などについても、日本人の場合と同様に外国人の労働者に対しても遵守する必要があります。
特に、外国人を雇用する企業には、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(以下では、「労働施策推進法」といいます。)に基づくルールが多く適用されます。
まず、事業主には、外国人労働者の雇い入れ・離職の際に、その氏名、在留資格などについて、ハローワークへ届け出ることが義務付けられています(労働施策推進法28条1項)。
次に、外国人を雇い入れる企業には、適切な雇用管理のため、厚生労働省から以下の措置をとることも求められています。
- 外国人労働者の募集および採用の適正化
- 適正な労働条件の確保
- 安全衛生の確保
- 雇用保険、労災保険、健康保険および厚生年金保険の適用
- 適切な人事管理、教育訓練、福利厚生など
- 解雇の予防および再就職援助
これらの措置についても対応をすることが必要です。
2、雇用にも影響がある「入管法」
在留資格制度など定めた法律に、いわゆる「入管法」という法律があります。正式な名称は、「出入国管理及び難民認定法」といいます。
企業としても、在留資格制度を理解して、外国人労働者へ適切に対応する必要があるのです。
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(1)在留資格とは?
在留資格とは、外国人が日本国に一定期間とどまるための資格をいいます。
外国人が入国・在留して従事することができる社会活動や在留することができる身分、地位を類型化して在留資格として定めたものです。
入国する前に審査があり、審査を通過した方には在留資格認定証明書が発給されることになります。
在留資格には29種類があり、外国人労働者は資格の種類ごとに決められた範囲内でのみ活動をすることができます。
したがって、外国人労働者の採用を検討する際には、就労が認められる種類の在留資格であるかどうかを確認する必要があるのです。
ここで注意が必要なのは、在留資格は、いわゆる「ビザ」とは全くの別物だということです。ビザは、多くの国において、入国を保証するものではなく、入国許可を受けるのに必要な書類の一部として理解されています。
つまり、外国人が日本で労働をするためには、ビザだけでなく、在留資格を得ることが必要なのです。 -
(2)在留資格の種類
29種類の在留資格は、就労の可否の観点から、以下の3種類に分類できます。
- 定められた範囲で就労が認められる20種類
外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、特定技能、技能実習、特定活動(ワーキングホリデーなど)
特に一般の事業所では、技術(自動車設計技師など)・人文知識・国際業務(通訳など)、企業内転勤、技能(コックなど)が多いようです。
- 原則的には就労が認められない在留資格5種類
文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在
- 就労活動に制限のない在留資格 4種類
永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者
これらの資格は活動によって在留が許可されるものではなく身分に基づいたものであるため、就労する範囲に制約を伴うことはありません。
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(3)在留資格の1つとしての技能実習
技能実習制度とは、外国人が、在留資格のうちの「技能実習」という資格に基づいて日本に滞在し、技能などの習得・習熟・熟達を図ることを目的として日本の企業で業務に従事する制度です。
この制度に関し、平成29年11月1日から、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(以下では、「技能実習法」といいます)が施行されました。
技能実習制度を用いて外国人を雇用する際には、受け入れの形態として2つのタイプがあり、そのいずれかの方法で受入企業となる必要があります。① 団体監理型
商工会などの、非営利の監理団体が技能実習生を受け入れ、その傘下の企業で技能実習が実施される仕組みです。
雇用契約そのものは、受入企業と技能実習生との間で行われますが、監理団体を介して技能実習生を受け入れます。
② 企業単独型
日本の企業が、海外の現地法人などの職員を受け入れて技能実習を実施する仕組みです。
団体監理型とは異なり、関連する海外の企業から直接技能実習生を受け入れます。
そして、いずれのタイプにより受け入れる場合でも、実習計画を策定し、その認定を受ける必要があります。
3、外国人を雇用する際に押さえておきたいポイント
以下では、外国人を雇用する際に押さえておくべきポイントを具体的に解説いたします。
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(1)採用時
- 募集をする際のポイント
- 従事すべき業務の内容
- 労働契約の期間
- 就業の場所
- 労働時間や休日、賃金
- 労働・社会保険の適用に関する事項
そして、これらの事項を明示する際には、外国人が理解できるよう、その外国人の使用言語か、または、平易な日本語を用いるなどの対応を取る必要があります。
- 採用の際のポイント
従事することが認められない外国人については、採用してはいけません。 -
(2)採用後
採用後には、以下の項目について適切な措置を行う必要があります。
- 適正な労働条件の確保
- 安全衛生の確保
- 雇用保険、労災保険、健康保険および厚生年金保険の適用
- 適切な人事管理、教育訓練、福利厚生など
- 解雇の予防および再就職援助
以下では、特に「労働条件の確保」と「解雇の予防および再就職援助」について解説します。
適正な労働条件の確保に関して注意すべきポイントは下記の通りです。① 均等待遇
国籍を理由に、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取り扱いをしてはなりません。
② 労働条件の明示
募集のときと同様に、主要な労働条件について内容を明らかにした書面を交付しなくてはなりません。
特に、明示の方法については、その外国人の母国語や平易な日本語を使うなど、外国人労働者が理解できる方法により行うよう努めることが求められます。
③ 賃金の支払い
最低賃金法などを遵守して、最低賃金額以上の賃金を支払うことは当然です。
また、基本給、割増賃金などの賃金についても、法令で別段の定めがある場合または労使協定が締結されている場合を除いて、全額を支払うことが必要です。
④ 適正な労働時間などの管理
法定労働時間及び時間外・休日労働の上限規制を遵守し、週休日の確保をはじめ適正な労働時間管理を行う必要があります。
もちろん、労働基準法に従い、年次有給休暇についても与える必要があります。
⑤ 労働基準法などの周知
労働基準法の内容や就業規則、労使協定についても日本人労働者同様に社内周知をしなくてはなりません。
その際には、分かりやすい説明書や行政機関が作成している多言語対応の広報資料等を用いる、母国語等を用いて説明するなど、外国人労働者の理解を促進するため必要な配慮をするよう努めることが求められます。
また、解雇の予防および再就職援助に関して注意すべきポイントは下記の通りです。
① 解雇
外国人の就労についても労働契約法の適用があるため、企業の側がやむなく解雇せざるを得ないと判断したとしても、労働契約法上違法な解雇であれば、その解雇は無効となってしまいます。
外国人労働者であっても安易な解雇は認められないことに注意してください。
② 雇止め
雇止めについても、解雇と同様に、労働契約法上の規制があります。
そのため、期間の定めのない契約における解雇と同視できる場合(労働契約法19条1号)や、契約更新につき合理的な期待がある場合(労働契約法19条2号)には、労働者が希望すれば有期契約が更新されることに注意しましょう。
③ 再就職援助
外国人労働者が事業主の都合により離職する場合において、当該外国人労働者が再就職を希望するときには、各種企業へのあっせんや、求人情報の提供など当該外国人労働者の在留資格に応じた再就職が可能となるよう、必要な援助を行うように努めることが求められています。
4、外国人の採用に関する問題は弁護士へ相談
外国人を採用するにあたっては、入管法といった在留資格制度についての理解することが必要になります。
また、労働基準法や健康保険法などの労働関係法令および社会保険関係法令は、国籍を問わず外国人にも適用されますので、これらの法令に関する知識も必要になるのです。
その他にも、人事管理や離職に関する問題など、法的に検討すべき点が多数存在するため、外国人を採用する場合や採用した後の労務問題などは、法律の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
5、まとめ
外国人を採用するために、募集、採用面接、実際の就労、離職とすべての場面で入管法や労働関係法令との抵触が問題になる可能性があります。
具体的なケースでどのように対応したらよいのかわからず、頭を悩ますことも少なくないでしょう。
ベリーベスト法律事務所では、外国人労働者に関する労務問題の相談も承っております。
労務問題にお悩みの経営者の方は、ぜひ、ベリーベスト法律事務所までご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています