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購入した不動産をクーリングオフすることはできるか?

2022年07月26日
  • 一般民事
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購入した不動産をクーリングオフすることはできるか?

住宅・土地統計調査によると、2018年10月1日時点における埼玉県内の総住宅数は、338万4700戸でした。市町別で見ると、さいたま市が60万8700戸、川口市が28万5710戸、所沢市が16万5420戸の順で多くなっています。

不動産の購入は非常に金額が大きな買い物となるため、買主には慎重な判断が求められます。場合によって、不動産投資の勧誘を受けて売買契約を締結したものの、後で思い直して「契約を撤回したい」と考えることもあるでしょう。

宅地建物取引業者(宅建業者)から不動産を購入する場合、不動産売買契約を締結した後でも、一定期間はクーリングオフが認められます。また、仮にクーリングオフができないとしても、他の手段で不動産売買契約を解除または取り消すことができる場合があります。

本コラムでは、不動産売買契約をクーリングオフするための条件や手続き、クーリングオフができない場合の対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 越谷オフィスの弁護士が解説します。

1、不動産売買契約についてクーリングオフができる条件

不動産売買契約については、宅地建物取引業法第37条の2の規定に基づくクーリングオフが認められています。
クーリングオフをすると、不動産売買契約を解除し、売主に対して支払った手付金などの金銭を返してもらうことができます。

ただし、不動産売買契約のクーリングオフをするには、以下の要件をすべて満たすことが必要となります

  1. (1)売主が宅地建物取引業者であること

    不動産売買契約のクーリングオフは、宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約についてのみ認められています(宅地建物取引業法第37条の2第1項)。
    したがって、売主が宅地建物取引業者でない場合には、不動産売買契約のクーリングオフは認められません。

    なお、売主が個人であっても、宅地建物取引業者であれば、クーリングオフの規定が適用されます。
    しかし、売主が法人である場合には、宅地建物取引業者でなければ、クーリングオフの規定は適用されないのです。

  2. (2)買主が宅地建物取引業者でないこと

    売主が宅地建物取引業者であっても、買主も宅地建物取引業者の場合には、宅地建物取引業法全体が適用除外となります(同法第78条第2項)。
    なお、宅地建物取引業法は、不動産取引についての専門的知識や情報に乏しい当事者を保護するための法律です。したがって、当事者双方が宅地建物取引業者の場合には、保護の必要性がなくなるために、宅地建物取引業も適用されなくなるのです。

    したがって、買主が不動産売買契約をクーリングオフするには、買主自身が宅地建物取引業者でないことが条件となります

  3. (3)事務所等以外の場所で契約を締結したこと

    不動産売買契約のクーリングオフが認められるのは、宅地建物取引業者の事務所・案内所・住宅展示場など以外の場所で、買い受けの申し込みまたは売買契約の締結がなされた場合に限られます(宅地建物取引業法第37条の2第1項)。

    そのため、事務所・案内所・住宅展示場などに自ら足を運んで、買い受けの申し込みおよび売買契約の締結を行った場合には、不動産売買契約をクーリングオフすることはできません
    また、申し込みと契約の場所が異なる場合は申し込みの場所で判断します。例えば、事務所等で買い受けの申し込みをして、事務所等以外の場所で売買契約を締結した場合にも、クーリングオフの対象外となります。

    これらのような事例では、買主に購入に向けた積極的な行為が認められることから、クーリングオフによって保護する必要性がないと考えられているのです。

  4. (4)クーリングオフ期間内であること

    不動産売買契約のクーリングオフ期間は、「クーリングオフができる旨およびその方法について書面を交付された日から8日間」です(宅地建物取引業法第37条の2第1項第1号、同法施行規則第16条の6)。
    上記の期間が経過すると、不動産売買契約をクーリングオフすることはできません

    なお、クーリングオフができる旨およびその方法についての書面が、同法施行規則第16条の6の規定に従って交付されていない場合は、クーリングオフ期間は進行せず、買主はいつでも不動産売買契約をクーリングオフすることができるのです。

  5. (5)不動産売買の決済前であること

    不動産売買契約をクーリングオフできるのは、不動産の決済前に限られます

    そのため、宅地または建物の引き渡しを受けて、かつ代金全部を支払った場合には、不動産売買契約をクーリングオフすることはできません(宅地建物取引業法第37条の2第1項第2号)。

2、不動産売買契約のクーリングオフには書面の発送が必要

不動産売買契約をクーリングオフする場合、売主である宅地建物取引業者に対して、クーリングオフの旨を記載した書面を発送する必要があります。

なお、クーリングオフの効果は書面の発送時点で発生します(宅地建物取引業法第37条の2第2項)。
したがって、発送日がクーリングオフ期間内であれば、到達日がクーリングオフ期間後となっても大丈夫です。

発送日を明確化するために、クーリングオフの書面は内容証明郵便で発送することをおすすめします

3、クーリングオフができない不動産売買契約を解除または取り消す方法

要件を満たさずにクーリングオフができない場合でも、以下の方法を用いて、不動産売買契約を解除したり取り消せたりする場合があります。

  1. (1)手付解除

    不動産売買契約の締結時に、売主に対して「手付(手付金)」を交付した場合、買主は手付を放棄することによって契約を解除できます(民法第557条第1項)。

    ただし、以下の場合には、手付解除が認められないので注意が必要です

    <手付解除が認められないケース>
    • 契約で定められる手付解除の期間を経過している場合
    • 契約で手付解除を認めない旨が定められている場合
    • 売主が契約の履行に着手した場合(注文住宅の建築工事開始など)
  2. (2)債務不履行解除(契約不適合責任に基づく場合を含む)

    売主が不動産売買契約上の義務に違反した場合、買主は債務不履行に基づき契約を解除できます(民法第541条、第542条)。

    目的物である不動産やその附属物について、種類・品質・数量に契約内容との不適合がある場合、買主は「契約不適合責任」に基づいて、同様に契約を解除することが可能です(民法第564条)。

    ただし、債務不履行(契約不適合)の程度が契約および取引上の社会通念に照らして軽微な場合には、契約解除が認められない点に注意してください(民法第541条但書き)。

  3. (3)消費者契約法に基づく契約取消し

    買主が個人(事業者として契約を締結する場合を除く)であり、売主が事業者であるケースにおいては、売主に以下の行為が認められる場合、買主は不動産売買契約を取り消すことができます(消費者契約法第4条第1項~第4項)。

    1. ① 重要事項の不実告知
    2. ② 不確実な事項に関する断定的判断の提供
    3. ③ 不利益事実の不告知
    4. ④ 消費者の要求に反する不退去
    5. ⑤ 退去しようとする消費者の妨害
    6. ⑥ 過量契約
    7. ⑦ 消費者の不安を煽(あお)る告知
    8. ⑧ デート商法
    9. ⑩ 霊感商法
    10. ⑪ 契約締結前にサービスを提供する行為


    特に不動産売買契約では、「① 重要事実の不実告知」「② 不確実な事項に関する断定的判断の提供」「③ 不利益事実の不告知」などが問題となりやすくなります。
    「営業マンのセールストークは、上記のいずれかに該当するのではないか」といった疑いが抱かれる場合には、確認のために、弁護士にまでご相談ください

  4. (4)錯誤・詐欺に基づく契約取消し

    不動産売買契約に関する重要な勘違いがあった場合には「錯誤取消し」(民法第95条)、売主にだまされて不動産売買契約を締結した場合には「詐欺取消し」(民法第96条第1項)が認められる可能性があります。

    <錯誤取消しの要件>
    ① 以下のいずれかに該当すること
    • 意思表示に対応する意思を欠いていたこと
    • 意思表示の動機に関する認識が真実に反しており、かつその動機を相手方に表示していたこと

    ② ①の錯誤の内容が、法律行為の目的および取引上の社会通念に照らして重要なものであること
    <詐欺取消しの要件>
    ① 相手方が欺罔(ぎもう:だます)行為をしたこと
    ② ①の欺罔行為により、購入者が錯誤に陥ったこと
    ③ ②の錯誤に基づき、購入者が商品・サービスを購入したこと

4、不動産売買のトラブルについて弁護士がサポートできること

不動産売買に関するトラブルには、目的物の金額が大きいため、極めて慎重な対応が求められます。
訴訟などに発展して長期化するケースも多いため、できる限り専門家のサポートを受けることが重要になります。

弁護士は、売主との交渉から訴訟まで、不動産売買に関するトラブル解決の手続きを一括してサポートいたします
依頼者である買主にとって、できる限り有利な解決を得られるように尽力いたします。

もし不動産の購入時に、トラブルが発生したした場合には、お早めに弁護士にご相談ください。

5、まとめ

不動産売買契約をクーリングオフするには、クーリングオフ期間をはじめとする複数の要件を満たす必要があります。
仮にクーリングオフができない場合でも、民法や消費者契約法に基づく契約の解除や取消しが認められる余地がありますので、弁護士へのご相談をおすすめします。

ベリーベスト法律事務所では、不動産売買に関するトラブルについて、随時法律相談を承っております
埼玉県越谷市は近隣市町村にお住まいで、締結済みの不動産売買契約をクーリングオフしたい方や、売主に対して責任追及を行いたい方は、ベリーベスト法律事務所 越谷オフィスにご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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