ホストやホステスの色恋営業は結婚詐欺? 弁護士が解説

2023年06月19日
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ホストやホステスの色恋営業は結婚詐欺? 弁護士が解説

ホストクラブやキャバクラには、疑似恋愛を体験させることでお客さんを楽しませる営業の手法があります。このような営業や接客手法を「色恋営業」といいます。

色恋営業自体は法律で規制されているものではありませんが、色恋営業の枠を超えて、結婚をほのめかしながら金銭の要求をすると、詐欺罪に当たる可能性があります。

本コラムでは、ホストやホステスの色恋営業が結婚詐欺かどうかについて、ベリーベスト法律事務所 越谷オフィスの弁護士が解説します。

1、結婚詐欺とは

まず、「結婚詐欺」という種類の犯罪の概要や、一般的な手口について説明します。

  1. (1)結婚詐欺とは?

    結婚詐欺とは、結婚する意思がないにもかかわらず、結婚する意思があるように装い、結婚を期待する相手の思いにつけ込んで、相手から金品をだまし取ることをいいます

    結婚詐欺は昔から存在している古典的な犯罪ですが、最近では、婚活パーティーやマッチングアプリなどを利用した新しい手口が増えています。
    結婚詐欺の被害者は、金品をだまし取られるだけでなく、恋愛感情をもてあそばれたことによる精神的苦痛も受けることになるため、詐欺の手口の中でも悪質なものといえるでしょう。

  2. (2)結婚詐欺でよくある手口

    結婚詐欺でよくある手口としては、以下のような順序で進行するものが挙げられます。

    ① 婚活パーティーやマッチングアプリなどで出会う
    結婚詐欺師は、相手からお金をだまし取ることが目的であるため、素性を知られたくないと考えます。
    友人や知人の紹介では、だました被害者から紹介者をたどって追及されるリスクがあるため、共通の知り合いなどもおらず、そのようなリスクの低い出会いの場として婚活パーティーやマッチングアプリを利用することで、だませる相手を探して詐欺を行う場合が多いのです。

    ② 結婚前提で交際をスタートさせる
    結婚詐欺では、手っ取り早く金品をだまし取るために、詐欺師が交際当初から「君との結婚を考えている」などと伝えて、結婚前提での交際をスタートさせることが多いです。

    ③ 突発的な事情によりお金を要求してくる
    詐欺師は、「ターゲットが自分に恋愛感情を抱いている」と判断したら、次に、さまざまな理由をつけて被害者からお金を引き出そうとします。
    具体的には、以下のようなうその事情をターゲットに対して訴えて、金銭を要求してきます。

    • 親や兄弟が病気になり入院費や治療費が必要
    • 会社の資金繰りが苦しくなった
    • 家族が貧乏で仕送りが必要
    など


    このような例に限らず、詐欺師はもっともらしい理由をつけて金銭を要求してきます。
    被害者がターゲットに対して恋愛感情を抱いていると、「自分が支えてあげなければ」と思い、嘘に気がつかなかったり、不審に思っても見て見ぬふりをしたりしてしまいます。

2、ホストやホステスの行為が詐欺罪に該当するケースは?

以下のようなケースでは、ホストやホステスの色恋営業が詐欺罪に当たる可能性があります。

  1. (1)結婚するためには店のナンバーワンになる必要があると告げてお金を使わせる

    ホストやホステスの色恋営業は、店での売り上げを増やして、自分の収入や地位を高める目的で行われます。
    お客さんとしても、疑似恋愛を楽しんでいるなかでお金を使う分には、特に問題はありません。

    しかし、結婚する気がないにもかかわらず、相手の恋愛感情につけ込んで、「店のナンバーワンになったら結婚する」、「結婚するためには、店での地位を上げる必要がある」などと結婚をほのめかして、ホストクラブやキャバクラに誘い、飲食代をだまし取った場合には、詐欺罪に当たる可能性があります。

  2. (2)結婚するために店を辞めたいが、店に借金があるため辞められないと告げてお金を要求する

    ホストやホステスが「結婚したいがホストクラブ(キャバクラ)に多額の借金があるため辞められない」などと借金があることを告げて、被害者から金銭を要求しようとする場合もあります。
    ホストやホステスから結婚をほのめかされた女性(男性)のなかには、つい、相手の借金を肩代わりしてしまう方もおられます。

    ホストやホステスがうそをついており実際には借金がなかった場合や、借金があったとしても返済するつもりがなかったにもかかわらずお金を要求した場合には、詐欺罪に当たる可能性があります。

  3. (3)家族や兄弟が病気になり、多額の治療費が必要とうそをつきお金を要求する

    ホストクラブやキャバクラでは、ホストやホステスからさまざまな話を聞かされます。
    ホストやホステスから「家族や兄弟が病気になったため、多額の治療費が必要だ」などと聞かされると、結婚を前提に交際していると思っているお客さんのなかには、「将来家族になる人のためならお金を出してもよいかも…」と考える人もいるでしょう。

    このようなケースで、本当は家族や兄弟が病気になっていなかったにもかかわらず、うそをついて、だまされた相手から金銭を受け取ることは、詐欺罪に当たる可能性があります。

3、詐欺被害に遭ったことを主張するために必要な証拠は?

詐欺被害に遭ったことを主張するためには、証拠が不可欠となります
以下では、詐欺被害に遭ったことを主張するための証拠について解説します。

  1. (1)結婚を前提として交際をしていた証拠

    結婚詐欺とは、被害者の「結婚したい」という感情につけ込んで詐欺を行う手口であるためまずは、結婚詐欺師と結婚を前提に交際していたという証拠が必要になります。
    このような証拠の例としては、以下のものが考えられます。

    • 「結婚したい」と告げられたメールやLINEのメッセージ
    • 婚活パーティーや婚活アプリでの出会いを証明するもの
    • 婚約指輪を購入した際のレシート、領収書
    • 結婚式場の契約金、前払金の領収書
  2. (2)相手に結婚する意思がないことを証明する証拠

    結婚するつもりがないにもかかわらず、相手が結婚をほのめかしていたことも、詐欺被害に遭ったことを主張するための有力な証拠となります。「本当に結婚するつもりがあった」などと言い訳されないようにするためにも、以下のような証拠を取得しましょう。

    • 相手の戸籍謄本
    • 複数の異性と交際していたことを示すもの(別の交際相手の証言、探偵や調査会社の素行調査・身辺調査など)
  3. (3)金品をだまし取ったことを証明する証拠

    結婚するつもりがないにもかかわらず結婚をほのめかしただけでは、詐欺罪という犯罪は成立しません。詐欺罪が成立するためには、何らかの財産的損害が発生したことが必要だからです。
    結婚を期待する相手の感情につけ込み、「お金を渡せば結婚できる」などと相手に誤信させ、金品をだまし取ることによって、詐欺罪という犯罪は成立します。
    そのため、ホストやホステスに金品をだまし取る意思があったことを証明する必要があります。

    たとえば、「親や兄弟が病気で多額の治療費が必要」と言われた場合には、そのことを告げられたメールやLINEのメッセージのスクリーンショットを取っておくとよいでしょう。それに加え、実際に治療費が必要であったかどうかの証拠があれば、より有利に事を進めることができます。
    親や兄弟が病気でなかった場合はもちろん、実際に病気であったとしても、そのことを口実にして遊興費にお金を使っていたなら、だます意思があったといえるでしょう。
    詐欺被害に遭ったことを主張するためには、できる限り多くの証拠を確保することが重要です。
    証拠が多ければ多いほど詐欺行為を立証しやすくなりますので、証拠になりそうなものは削除したり、捨てたりせずに保管しておくようにしましょう

4、結婚詐欺かもと思ったらまずは弁護士に相談を

「結婚詐欺の被害に遭っているかも…」と思ったら、まずは弁護士に相談してください。

  1. (1)詐欺に当たるかどうか判断してもらえる

    ホストやホステスから結婚詐欺でだまされたかもと思っても、ホストに対する恋愛感情が残っている状態では、自分の状況を客観的かつ冷静に判断することはできません。
    また、結婚詐欺にあたるかどうかには法律が関係してくるため、専門家でなければ判断が難しいといえます。

    弁護士であれば、ご本人から具体的な状況を丁寧にヒアリングしたうえで、詐欺罪にあたるかどうかを適切に判断することができます
    ご自身のトラブルが結婚詐欺かもしれないと悩んでいる場合は、一度弁護士に相談してください。

  2. (2)だまされて支払ったお金の返還交渉を任せることができる

    詐欺被害に遭った場合には、だまされて支払ったお金をホストから取り返すことができる可能性があります。
    しかし、被害者本人では、ホストやホステスに対して返金を求めたとしても、言葉巧みに言いくるめられてしまい、お金を取り返せなかったりさらに被害が拡大したりするおそれがあります。

    弁護士であれば、被害者に代わってホストやホステスとの交渉の窓口になることができます
    弁護士は、交渉の専門家ですので、詐欺罪に当たることを法的根拠に基づき主張することによって、だまされて支払ったお金を取り戻しやすくなります。
    恋愛感情をもてあそばれた相手と直接交渉しなければならないのは、精神的にも大きな負担となるはずです。
    相手との交渉は、弁護士に任せましょう。

  3. (3)刑事告訴についてもサポート

    結婚詐欺は、民事上のトラブルとしてお金の返還を求めることができるだけでなく、刑法上の詐欺罪に該当する可能性があります。

    だまされた相手に対して、刑事処分を望むのであれば、詐欺罪での刑事告訴も検討する必要があります。
    弁護士であれば、民事上の責任追及だけではなく、刑事告訴による刑事責任の追及についてもサポートすることができます

5、まとめ

ホストクラブやキャバクラでは、色恋営業によって疑似恋愛を体験することができます。
しかし、色恋営業を超えて、結婚をほのめかして金品を要求してきた場合には、結婚詐欺である可能性がありますので注意が必要です。

「結婚詐欺の被害に遭ったかもしれない…」と感じたらすぐに弁護士に相談しましょう。
結婚詐欺被害の相談をご希望の方は、ベリーベスト法律事務所 越谷オフィスまでお気軽にご連絡ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています