家庭裁判所における親族関係調整調停の概要を解説

2022年07月26日
  • 個人のトラブル
  • 親族関係調整調停
家庭裁判所における親族関係調整調停の概要を解説

埼玉県のデータによると、2022年1月1日時点において、埼玉県内の総人口は733万6455人で、過去1年間で7541人の減少となりました。同日時点での埼玉県内の世帯数は320万2873世帯で、1世帯当たりの人員は2.29人となっています。

親族同士の関係性が悪化した場合、家庭裁判所の「親族関係調整調停」を通じて、問題の解決をはかる、という選択を検討することができます。冷静で建設的な話し合いをすることで円満な問題解決を目指すために、まずは弁護士にご相談ください。

本コラムでは、家庭裁判所で行われる「親族関係調整調停」の概要と手続きの流れや、家族間トラブルの解決を弁護士に依頼するメリットなどについて、ベリーベスト法律事務所 越谷オフィスの弁護士が解説します。

1、親族関係調整調停とは?

親族同士のトラブルが当事者同士の話し合いでは解決できない場合には、家庭裁判所の「親族関係調整調停」を利用することで、解決できる可能性があります。

  1. (1)円満な親族関係を回復するための話し合いを行う調停

    「親族関係調整調停」は、親族同士のトラブルを解決することを目的とした、家庭裁判所で行われる調停手続きです。

    親族同士は、近しい間柄であるがゆえに、ふとしたきっかけからトラブルに発展してしまうこともあります。
    一度親族同士のトラブルに発展してしまうと、感情的な対立がエスカレートすることで、なかなか解決しない事態にもなりかねません。

    親族同士のトラブルがこじれてしまった場合に役立つ法的な手続きとして、「親族関係調整調停」が存在します

    親族関係調整調停では、客観的な立場にある調停委員が、当事者の言い分を公平に聞き取ったうえで、和解に向けての解決策を模索する手続きです。
    調停委員を仲介役とすることにより、冷静な話し合いが成立する可能性を高くできる点が、親族関係調整調停の大きなメリットです。

  2. (2)親族関係調整調停で話し合うことのできる事項

    親族関係調整調停では、親族間トラブル全般について、その解決方法を話し合うことができます。

    親族関係調整調停で話し合える事項の具体例としては、以下のようなものがあります。

    • 親族間の生活費の分担
    • 親子間での金銭の無心に関するトラブル
    • 高齢者である親族の財産管理に関するトラブル
    • 親族同士の同居、別居に関するトラブル


    上記以外にも、親族間トラブルに関連する事項であれば、親族関係調整調停の対象事項となるのです。

    ただし、離婚については離婚調停(夫婦関係調整調停(離婚))の守備範囲となるように、個々の問題について特別の調停手続きが設けられていることもあります
    また、親族同士ではない他人同士のトラブルについては、通常の民事調停の対象となります。

  3. (3)親族関係調整調停の申立先・必要書類・費用

    親族関係調整調停の申立先・必要書類・費用は、以下のとおりです。

    1. ① 申立先
      親族関係調整調停の申立先は、原則として、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所です。
      ただし、当事者双方の合意があれば、別の家庭裁判所に親族関係調整調停を申し立てることも可能です。
    2. ② 必要書類
      親族関係調整調停を申し立てる際の必要書類は、申立書とその写し一通のみとなります。
      申立書の書式は、裁判所のホームページからダウンロードすることが可能です。
      添付書類は特に必要ありませんが、審理のために必要な場合は、家庭裁判所から追加書類の提出を求められる場合があります。
    3. ③ 費用
      親族関係調整調停にかかる費用は、収入印紙1200円分と、連絡用の郵便切手です。
      郵便切手の金額は数千円程度ですが、具体的な金額は家庭裁判所によって異なります。
      また、弁護士を代理人として伴う場合には、別途に依頼費用が発生します。

2、親族関係調整調停の手続きの流れ

親族関係調整調停は、大まかに以下の流れで進行します。
手続き全体の流れを事前にイメージすることで、実際に調停を行う際にも戸惑うことなく進めることができるでしょう。

  1. (1)家庭裁判所に調停申し立てを行う

    まずは、管轄の家庭裁判所に対して。親族関係調整調停の申立書を提出します。

    このとき、申立書に不備等がある場合には、家庭裁判所が申立人に補正を求める場合があります。
    速やかな補正を行うことができるように、申立書を提出する際には、印鑑などを持参しておくことをおすすめします。

    なお、弁護士を代理人とする場合には、申立書の提出も弁護士に一任できます。

  2. (2)調停期日|調停委員との面談・主張の調整等

    家庭裁判所は、親族関係調整調停の申立書を受理した後、第1回の調停期日を指定します。

    調停期日では、家庭裁判所に足を運んだ各当事者から、調停委員が個別に事情を聴取します。
    交互に双方から事情を聴くなかで、適宜譲歩を提案するなどして、和解できるポイントがないかを模索されていくのです。

    和解の可能性があるうちは、調停期日は何度でも繰り返されます。
    調停期日の開催ペースは、おおむね1カ月に1回程度になります。

  3. (3)調停成立or不成立

    調停期日での話し合いが煮詰まった段階で、調停委員は当事者双方に調停案を提示します。

    調停案に当事者双方が同意した場合、調停は成立となり、調停内容は当事者双方を拘束します。
    これに対して、当事者のどちらか一方でも調停案に同意しない場合には、調停は不成立となるのです

  4. (4)審判事項に限り、家庭裁判所が審判を行う

    調停不成立となった場合、そのままでは当事者は何の解決も得ることができません。

    再び当事者同士で話し合ってもらうのも一つの考え方ですが、家事事件手続法に定められる審判事項(同法別表第一、別表第二)については、家庭裁判所が「審判」によって結論を示すこともできます。

    親族関係調整調停で取り扱われる事項のうち、家庭裁判所の審判事項とされているものの例は、以下のとおりになります。

    • 親族間の扶養に関する事項(別表第一第84号、第85号)
    • 夫婦の同居、別居、協力、扶助に関する事項(別表第二第1号)
    • 婚姻費用の分担に関する事項(別表第二第2号)


    審判手続きでは、調停における話し合いの内容や、当事者から提出された資料などを総合的に考慮して、家庭裁判所が解決策を提示します。
    そして、審判が確定した場合には、当事者はその内容に拘束されることになるのです。

3、家族間トラブルの解決を弁護士に依頼するメリット

「家族間トラブルは、できる限り当事者同士で解決したい」と考える方も多いでしょう。

たしかに、当事者同士の話し合いがスムーズにいくのであれば、それにこしたことはありません。
しかし、親族同士であるがゆえに解決が難しいという側面もあります。
話し合いがこじれてしまい、当事者同士での解決のめどが立たない場合には、弁護士にご相談することをおすすめします。

家族間トラブルの解決を弁護士に依頼する主なメリットは、以下のとおりです。

  1. (1)法律上の権利をきちんと主張できる

    家族間トラブルでは、家族ならではのしがらみのために、個人に備わった法律上の権利が侵害されてしまう場合があります。

    弁護士に依頼すれば、権利が侵害されている場合にはそれを立証して、権利が正当に尊重されるように要求することができます
    特に、日常的な家族関係において相手が強い発言力を持っているようなケースでは、交渉の代行を弁護士に依頼することも検討してください。

  2. (2)冷静な話し合いが期待できる

    家族同士がトラブルの解決について話し合うと、近しい間柄であるがゆえに、かえって感情的な対立が生まれてしまうケースが少なくありません。

    弁護士に依頼して交渉を代わりに行ってもらえば、あくまでも客観的で冷静な視点から主張を交わし合うことができるため、感情的な対立を回避することができます

    無益な言い争いを避けて、トラブル解決に向けた建設的な話し合いをしたい場合には、早い段階から弁護士に依頼することをおすすめします。

  3. (3)話し合いや手続きのストレス・労力が軽減される

    家族同士であっても、関係性が悪化してお互い顔を見るのもいやだ」というほどになってしまった場合には、相手と交渉を行うこと自体が精神的な負担になってしまいます。

    弁護士にご依頼いただければ、相手方との交渉は、全面的に弁護士が代行することができます
    相手方と直接話し合う必要がなくなるため、精神的ストレスや労力を大きく軽減できるでしょう。

    家族間トラブルに巻き込まれて、トラブルの対応や相手との交渉にストレスや精神的な苦痛を感じている方は、お早めに弁護士にまでご相談ください。

4、まとめ

家族間や親族間のトラブルを話し合いで解決するのが難しい場合は、家庭裁判所の「親族関係調整調停」を利用するという選択肢があります。

トラブルの解決に向けて、協議や調停へとスムーズに対応するためには、弁護士へのご依頼することをおすすめします。
弁護士にご依頼いただくことで、冷静な話し合いが期待できるとともに、トラブルに相手との調整にかかる労力や精神的ストレスを大きく軽減できるのです。

ベリーベスト法律事務所では、家族・親族間トラブルに関する法律相談を随時受け付けております
埼玉県越谷市や近隣市町村にお住まいの方は、ベリーベスト法律事務所 越谷オフィスにまでご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています