裁判離婚の費用はどのくらい? 裁判離婚の流れや費用を抑える方法
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埼玉県が公表している「埼玉県の人口動態概況」によると、埼玉県では令和4年に1万259組の夫婦の離婚が成立しています。
離婚方法には、夫婦間協議によって離婚する「協議離婚」、離婚調停で離婚する「調停離婚」、離婚裁判(離婚訴訟)で離婚する「裁判離婚」などがあります。話し合いで離婚が成立する協議離婚や調停離婚とは異なり、「裁判離婚」の場合にはさまざまな費用が必要です。
本記事では、裁判離婚にかかる費用や手続きについてベリーベスト法律事務所 越谷オフィスの弁護士が解説します。
1、離婚裁判と法定離婚事由の関係
「離婚裁判」は裁判官に判決を下してもらう裁判上の手続きで、離婚裁判で離婚が認められるためには民法で定められた離婚原因(法定離婚事由)のうち、いずれかに該当する必要があります。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 配偶者の生死が3年以上不明
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
これまで「配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがない」場合も、離婚事由として認められていましたが、令和6年5月24日に公布された民法の一部改正により、法定離婚事由からは削除されることが決まりました。同条文の削除は、公布から2年以内に施行されます。
なお、離婚裁判は「調停前置主義」といって、離婚裁判よりも先に「離婚調停」を申し立てなければ、裁判を提起することはできません。
2、裁判離婚の手続きと流れ
では、離婚裁判の手続きと流れを、順を追ってみていきます。
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(1)家庭裁判所に訴状の提出
まずは家庭裁判所に訴状を提出します。訴状の提出先は、原則夫婦どちらかの所在地を管轄する家庭裁判所です。
ただし、住所地を管轄する家庭裁判所と離婚調停を行った家庭裁判所が異なる場合、離婚調停を行った家庭裁判所で離婚裁判が行われるケースもあります。
訴状の提出の際には、訴状2部に加えて、夫婦の戸籍謄本の原本とコピー、その他ケースごとに応じた書類が必要です。 -
(2)第1回口頭弁論期日が通知される
裁判所が訴状を受け取ると、第1回口頭弁論期日が裁判所から夫婦それぞれに通知され、被告(訴えられた側)は、答弁書(反論書)を提出します。
第1回口頭弁論期日は、訴状提出の約1か月後に設定される場合が多いです。 -
(3)口頭弁論
「口頭弁論」では、裁判官の前でお互い自分の主張を述べ、その主張を裏付ける証拠を提出します。本人が必ず出廷する必要はなく、弁護士に代理人として出廷してもらうことも可能です。
口頭弁論が1回で終わることは少なく、1か月に1回のペースで何度か開かれます。争点が整理されて証拠調べが終わった段階で、次に行われるのが「本人尋問」です。 -
(4)本人尋問
「本人尋問」は証人や原告、被告といった当事者が出廷し、代理人弁護士や裁判官からの尋問に答える手続きです。代理人弁護士がいない場合、相手への尋問は自分で行わなければなりません。
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(5)判決が言い渡される
離婚裁判の手続きのなかで、裁判官から「和解」をすすめられる場合もあります。裁判官の提示する「和解案」に双方が合意すると、「和解調書」が作成されて、判決を待つことなく離婚を成立させることができます。
裁判官の出す和解案に合意しなかった場合は、裁判官から言い渡される判決を待つことになります。判決が下されるのは、すべての口頭弁論が終わってから約1か月後で、下された判決に対して不服の場合は「控訴」することも可能です。
さらに、控訴審判決にも不服がある場合は「上告」をし、判決が確定します。
判決が確定すると、10日以内に原告が離婚届を提出しなければなりません。裁判所によって作成された「判決書」の謄本と戸籍謄本を添えて市町村役場に離婚届を提出することで、離婚が成立します。
3、離婚裁判の費用や期間はどのくらい?
離婚裁判には、どのくらいの費用や期間がかかるのでしょうか?詳しくみていきましょう。
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(1)離婚裁判の費用
離婚裁判費用(訴訟費用)には、「裁判所への費用」と「弁護士に支払う費用」があります。
① 裁判所への費用
裁判所に支払う必要があるのは「手数料(収入印紙代)」や「郵便切手代」です。
手数料の金額は訴訟の内容によって異なりますが、おおよそ2万円程度はかかると想定しておいた方がよいでしょう。
離婚だけを求める場合は1万3000円ですが、財産分与もする場合は1200円、養育費も請求する場合は子ども1人につき1200円といった形で、手数料が加算されます。
また、慰謝料請求をする場合は、請求額に応じた手数料がかかりますが、「離婚手数料+その他の請求」と「慰謝料請求+その他の請求」の合計金額を比較し、高い方が手数料となります。
郵便切手代の金額の相場は6000円ほどですが、裁判所によって異なるため提起する裁判所で確認するようにしましょう。
② 弁護士に支払う費用
弁護士に支払う費用の項目は、主に「相談料」「着手金」「成功報酬」の3つです。
「相談料」は法律相談時に支払う費用、「着手金」は弁護士への依頼時に支払う費用、「成功報酬」は弁護士に依頼した案件の成功程度に応じて支払う費用のことを指します。
依頼する事務所や、相談内容によって金額は大きく異なるため一概にはいえませんが、弁護士費用は数十万~数百万程度かかると想定しておいた方がよいでしょう。
費用をホームページ上に掲載している事務所であれば、おおよその目安がわかるので安心できます。また、無料相談を行っている法律事務所もあるので、依頼を決める前にしっかりと相談することが大切です。
なお、裁判所への費用は原告・被告で分担し、弁護士費用は基本的に自己負担になりますが、慰謝料請求をする場合には相手に弁護士費用を請求できる可能性もあります。
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(2)離婚裁判にかかる期間
離婚裁判の期間は早くて半年、長引くと数年かかるケースもありますが、1〜2年のケースが多いでしょう。
期間にばらつきがあるのは、争いの内容や証拠の程度によって早く決着がつくケースもあれば長引くケースもあるからです。
たとえば、離婚自体には合意していて離婚条件の養育費の金額だけ争っているケースと、財産分与や慰謝料、親権、養育費の金額、面会交流などで争っているケースを比べると、争点の多い後者の方は離婚裁判が終了するまでの期間は長くなる傾向にあります。
また、控訴や上告が行われると期間はさらに長期化するでしょう。
4、裁判離婚の費用を抑える方法
裁判所への費用を抑えることはできませんが、弁護士費用は比較、検討することができます。
弁護士費用は、法律事務所によって異なります。そのため、料金体系が明確な事務所や、契約前に、どの程度の費用がかかりそうかを説明してくれる事務所に依頼すると安心です。
たとえば、離婚裁判で弁護士に依頼する際に支払う費用に着手金がありますが、着手金は仮に自分の思うような結果に至らなかった場合でも、返金を求めることはできません。
着手金を、無料あるいは安く設定している事務所もありますが、このような料金体系の場合、成功報酬が割高に設定されていることもあります。
そのため、「相談料」「着手金」「成功報酬」の合計金額を確認しつつ、それ以外にどのような費用がかかるのかを確認してから、依頼先は決めたほうが良いでしょう。
もちろん、費用を安く抑えられるのであれば、それに越したことはないですが、弁護士の説明や費用の内訳に納得ができるのかも大切なポイントです。
5、離婚のトラブルを弁護士に相談するメリット
弁護士に依頼すると、裁判に至った場合も、手続きや書類作成、期日の対応まで、全面的にサポートしてもらうことができます。
ただし、訴訟に発展すると、解決までには時間を要することになるため、協議や離婚調停で解決ができれば、精神的にも時間、金銭的にも、負担は大幅に軽減されるでしょう。
そのため、離婚のトラブルが起きた際に、早めに弁護士に相談することをおすすめします。弁護士が介入することで裁判になる前に解決できる可能性は高まります。弁護士に交渉を任せつつ、法的なアドバイスを受けて、冷静に判断をすることができれば、解決の糸口も見つけやすくなるでしょう。
離婚問題は、なるべく早い段階で弁護士に相談することがおすすめです。
お問い合わせください。
6、まとめ
離婚裁判の費用は、大きく分類すると「裁判所への費用」と「弁護士に支払う費用」に分けられます。
裁判所への費用は、主に手数料(収入印紙代)と郵便切手代があげられます。
弁護士費用は、相談料、着手金、成功報酬の3つが基本的な項目ですが、金額は事務所や相談内容によって大きく異なるので、依頼する前にしっかりと費用面についても確認しておくことが大切です。
離婚問題に直面した際は、まずはベリーベスト法律事務所 越谷オフィスの弁護士にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています