養育費の計算はどうやるの? 年収と手取りの関係
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夫婦に子どもがいる場合には、離婚後の養育費について取り決めをする必要があります。養育費の金額は、夫婦の話し合いによって決めることもできますが、一定の相場が存在します。
裁判所が公表している「算定表」を参照しながら、正確な金額を算定するための基本的な計算方法について把握しておきましょう。
本コラムでは、養育費の基本的な計算方法や、年収や手取りと養育費の関係などについて、ベリーベスト法律事務所 越谷オフィスの弁護士が解説します。
1、養育費の基本的な計算方法|年収と手取り
まず、養育費の金額の基本的な計算方法について解説します。
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(1)権利者と義務者の年収を確定
養育費の金額を計算するためには、まずは、権利者(養育費を受け取る側)と義務者(養育費を支払う側)の年収を確定する必要があります。
この場合に使用する年収資料は、直近の源泉徴収票などです。
源泉徴収票を利用する場合、その「支払金額」欄に記載されている金額が基準となります。
いわゆる「手取り収入」は税金や社会保険料などが控除された後の金額であるため、養育費の計算にあたっては、控除前の支払金額を使うことになるのです。 -
(2)権利者と義務者の基礎収入を計算
養育費の計算においては、権利者および義務者の年収がそのまま基準になるわけではありません。年収総額から公租公課、住居関係費、職業費などの特別経費を控除した「基礎収入」が養育費計算の基準となります。
具体的には、確定した年収に一定の基礎収入割合をかけて、基礎収入を算出します。基礎収入割合は、その収入に応じて、給与所得者であれば38%から54%、自営業者であれば48%から61%の範囲で設定されています。 -
(3)子どもの生活費を計算
養育費の支払対象となる子どもの生活費については、子どもの生活費指数を用いて、以下のように計算をします。
子どもの生活費
=義務者の基礎収入×子どもの生活費指数の合計÷(100+子どもの生活費指数の合計)
なお、「生活費指数」とは、親を100とした場合における子どもの生活費の割合のことです。
生活費指数は、子どもの年齢に応じて以下のように定められています。
- 0歳から14歳の子ども:62
- 15歳以上の子ども:85
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(4)養育費の額を決定
義務者が負担すべき養育費の金額は、上記で明らかになった数値を用いながら、以下のような計算方法によって算出します。
義務者が負担する1か月の養育費
=子どもの生活費×{義務者の基礎収入÷(権利者の基礎収入+義務者の基礎収入)}÷12か月
2、養育費算定表の概要
養育費の金額は、上記のような計算方法によって算出しますが、実際には非常に複雑な計算となります。
そのため、実務上では、養育費算定表を利用することが一般的です。
以下では、養育費算定表について説明します。
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(1)養育費算定表とは
養育費算定表とは、裁判所が公表している養育費算定ツールです。
養育費算定表には子どもの人数・年齢に応じて複数の表が記載されており、権利者と義務者の収入がわかれば相場となる養育費の金額を簡易迅速に把握することができます。
具体的には、養育費算定表の縦軸には義務者の年収が記載されており、横軸には権利者の年収が記載されています。
該当する年収の縦軸と横軸が交差する部分が、養育費の金額の相場です。
ただし、養育費算定表に記載されている養育費の相場は、「1万円から2万円」のように、幅のある金額になっているため、夫婦の個別事情に応じて上限から下限の範囲で具体的な金額を決めていくことになります。 -
(2)養育算定表は一般的なケースを前提に考えられている
養育費算定表は、複雑な養育費計算を簡易迅速に行うことを目的に作成されたツールです。家庭裁判所の実務においても養育費算定表は利用されているため、信頼性のあるツールといえます。
しかし、養育費算定表で考慮されている公租公課や住居関係費、職業費などは、あくまでも標準的な家庭を想定したものとなっています。
基本的に、「子どもが私立学校に通っている」「高額な住宅ローンの負担がある」などの、家庭ごとの特別な事情は、養育費算定表では考慮されていないのです。
養育費算定表に記載されている金額にはある程度の幅が存在しており、その幅のなかで一定の事情が考慮されているという面もありますが、算定表によって計算をすることが著しく不公平になるような場合もあります。
そのような場合には、算定表を用いずに個別の事情を考慮しながら、養育費の金額を計算しなければいけません。
3、養育費の計算|モデルケース
以下では、具体的なケースを挙げながら、養育費の計算方法を紹介します。
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(1)夫と専業主婦の離婚のケース
① 子どもの年齢が0歳から14歳
義務者(夫)の年収が600万円、権利者(妻)の年収が0円(専業主婦)で、子どもが1人(0歳から14歳)であった場合には、養育費算定表では、6~8万円が養育費の相場となります。
このケースで標準的な算定方式を用いて計算をすると、以下のようになります。
- 義務者の基礎収入:600万円×41%=246万円
- 権利者の基礎収入:0円
- 子どもの生活費=246万円×62÷(100+62)≒94万1481円
- 義務者が負担する1か月の養育費=94万1481円×{246万円÷(0円+246万円)}÷12か月≒7万8457円
② 子どもの年齢が15歳以上
義務者(夫)の年収が600万円、権利者(妻)の年収が0円(専業主婦)で、子どもが1人(0歳から14歳)であった場合には、養育費算定表では、8~10万円が養育費の相場となります。
このケースで標準的な算定方式を用いて計算をすると、以下のようになります。
- 義務者の基礎収入:600万円×41%=246万円
- 権利者の基礎収入:0円
- 子どもの生活費=246万円×85÷(100+85)≒113万270円
- 義務者が負担する1か月の養育費=113万270円×{246万円÷(0円+246万円)}÷12か月≒9万4189円
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(2)夫とパート勤務の妻が離婚するケース
① 子どもの年齢が0歳から14歳
義務者(夫)の年収が400万円、権利者(妻)の年収が100万円で、子どもが1人(0歳から14歳)であった場合には、4~6万円が養育費の相場となります。
このケースで標準的な算定方式を用いて計算をすると、以下のようになります。
- 義務者の基礎収入:400万円×42%=168万円
- 権利者の基礎収入:100万円×50%=50万円
- 子どもの生活費=168万円×62÷(100+62)≒64万2963円
- 義務者が負担する1か月の養育費=64万2963円×{168万円÷(50万円+168万円)}÷12か月≒4万1291円
② 子どもの年齢が15歳以上
義務者(夫)の年収が400万円、権利者(妻)の年収が100万円で、子どもが1人(15歳以上)であった場合には、4~6万円が養育費の相場となります。
このケースで標準的な算定方式を用いて計算をすると、以下のようになります。
- 義務者の基礎収入:400万円×42%=168万円
- 権利者の基礎収入:100万円×50%=50万円
- 子どもの生活費=168万円×85÷(100+85)≒77万1892円
- 義務者が負担する1か月の養育費=77万1892円×{168万円÷(50万円+168万円)}÷12か月≒4万9571円
4、養育費を含む離婚問題は弁護士へ
養育費を含む離婚問題でお悩みの方は、弁護士にご相談ください。
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(1)適切な養育費の金額を計算してもらえる
養育費の金額の相場は、養育費算定表を利用すれば、誰でも簡単に知ることができます。
しかし、養育費算定表では個別の事情がすべて考慮されているわけではないため、特別な事情がある場合には、養育費算定表の相場を修正する必要があります。
養育費を正確に計算するためには、養育費算定表で考慮されている事情や数値などについて正確な理解が不可欠です。
したがって、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。 -
(2)相手との交渉を任せることができる
離婚をする際には、離婚をするかどうか、離婚をする場合にどのような条件で離婚をするのかなどを決めなければなりません。
そのためには相手との話し合う必要もあります。
しかし、離婚に至る経緯や相手との関係性によっては、お互いに顔を合わせて話し合いをすることが難しい場合もあるでしょう。
弁護士に依頼すれば、相手との交渉を任せることができます。 -
(3)公平な条件で離婚できる可能性が高くなる
離婚にあたっては、養育費、慰謝料、財産分与、親権、面会交流など、さまざまな条件を取り決める必要があります。
離婚後の経済的な不安を解消するには、少しでも公平な条件で離婚をすることが大切です。
弁護士に依頼すれば、相手との交渉や、調停に裁判などの様々な手段を駆使して、少しでも公平な条件での離婚を成立させる可能性を高めることができます。
5、まとめ
養育費の金額は、権利者および義務者の年収を基準として、複雑な計算によって算出します。金額のおおまかな概要を知りたいという場合には養育費算定表を利用することもできますが、ご自身の状況に合った適切な金額を知りたいという場合には弁護士に相談することをおすすめします。
養育費を始めとする離婚問題でお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています