勝手に連帯保証人にされていたらどうすべき? 実現可能な法的対応
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帝国データバンクの調査によると、令和2年中の埼玉県内における企業の休廃業・解散は2425件で、3年連続の減少となりました。コロナ禍の影響はあれども、企業倒産防止に向けた官民一体の経済支援策が奏功した結果と考えられます。
ただし、知らないうちに身内や友人の連帯保証人にされていた場合、債務不履行によって予想だにしない請求を受けてしまうおそれがあります。もし身に覚えのない連帯保証債務の請求を受けた場合には、速やかに弁護士へご相談いただき、理不尽な支払いを回避するための対策を講じましょう。
今回は、勝手に連帯保証人にされてしまい、債権者から身に覚えのない請求を受けた場合の対処法について、ベリーベスト法律事務所 越谷オフィスの弁護士が解説します。
1、身に覚えがない請求が来た場合に確認すべきこと
自分が負担した覚えのない債務について請求を受けた場合、混乱してしまうのは無理のないことです。
しかし、まずはいったん冷静になって、以下の確認・検討を行いましょう。
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(1)請求者の情報を確認する|氏名・名称・住所など
債務の支払いを請求する書面には、債権者(請求者)に関する情報が記載されているのが通常です。
まずは氏名(法人であれば名称)や住所などを確認して、債権者に心当たりがあるかどうかを確認しましょう。
もし全く見知らぬ者が債権者として記載されている場合には、正当な根拠のない請求である可能性が高いです。 -
(2)請求の根拠を確認する|契約書名・日付など
債権債務関係が発生する場合には、必ず法律上の根拠が存在します。
一般的には、「契約」か「不法行為」のいずれかが請求の根拠となります。
請求の根拠については、請求書面の中に記載されていることが多いです。
その記載内容から、どのような根拠に基づいて請求が行われているのかを確認しましょう。
連帯保証債務の請求であれば、連帯保証契約書の名称や日付などが記載されていると考えられます。
もし契約書の存在について身に覚えがない場合には、誰かから勝手に連帯保証人にされていた可能性があります。 -
(3)請求額・支払期限を確認する
請求の根拠について身に覚えがないとしても、念のため、請求額を確認しておきましょう。
万が一債権者の請求が認められる結果となった場合、その金額を支払わなければならないからです。
ご自身にとって最悪の事態を念頭に置いてリスク管理を行うため、請求額を一度確認しておくことは大切になります。
また、支払期限についても確認しておきましょう。
もし間近な時期に支払期限が設定されている場合には、早急に弁護士へご相談いただくことをおすすめします。 -
(4)請求内容が正当なものであるかどうかを検討する
上記の各事項を確認すれば、請求内容のうち重要な部分を最低限把握できるでしょう。
そうしたら、次は「請求内容が正当なものであるか」について、法的な観点から検討する必要があります。
過去に契約を締結した事実があるのか、ないとすれば契約の無効を主張できるのかについて、弁護士のアドバイスを受けながら検討し、その後の対応方針を決定しましょう。
2、勝手に連帯保証人にされた場合、債務を支払う必要はある?
身内や友人によって、知らないうちに連帯保証人にされていた場合、主となる債務者が滞納したり自己破産をしたりしたときなどに、債権者から連帯保証債務の履行を求められる可能性があります。
この場合、身に覚えがないとしても、連帯保証債務を履行しなければならないのでしょうか?
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(1)同意のない連帯保証契約は原則無効
民法の大原則として、契約は当事者同士の合意によって成立します。
したがって、当事者間で合意が成立していない場合には、契約は不成立または無効となります。
連帯保証契約についても、連帯保証人の同意(=保証意思)がない場合には無効となるのが原則です。 -
(2)例外的に連帯保証債務を負うケース|表見代理について
しかしながら、連帯保証人の同意があると債権者が信じても仕方がない理由がある場合には、債権者の保護もある程度考える必要があります。
そこで民法では、以下の場合について「表見代理」を成立させ、連帯保証人の同意がなかったとしても、連帯保証契約の成立を認めるものとしています。- ① 代理権授与の表示による表見代理(民法第109条第1項)
連帯保証人が債権者に対して、代理人に連帯保証契約を締結する代理権を与えた旨を表示した場合には、連帯保証人の真意とは異なるとしても、表見代理によって連帯保証契約が成立します。
ただし、債権者が代理権のないことを知り、または過失により知らなかった場合には、連帯保証契約は成立しません。 - ② 権限外の行為の表見代理(民法第110条)
連帯保証人の代理人が、権限外の行為として債権者と連帯保証契約を締結した場合において、債権者が代理権の存在を信ずべき正当な理由があるときは、連帯保証人の真意とは異なるとしても、表見代理によって連帯保証契約が成立します。
「正当な理由」の判断に当たっては、代理人が連帯保証人の実印や印鑑証明書を所持しているかどうかなどの事情が考慮されます。 - ③ 代理権消滅後の表見代理(民法第112条第1項)
連帯保証人の代理人の代理権が消滅した後、代理人が元々の権限の範囲内で債権者と連帯保証契約を締結した場合において、債権者が代理権の消滅につき知らなかった場合には、表見代理によって連帯保証契約が成立します。
ただし、債権者が代理権の消滅を過失により知らなかった場合には、連帯保証契約は成立しません。
なお、上記のうち「①と②」および「②と③」は、それぞれ併せて適用することも可能です(民法第109条第2項、第112条第2項)。
上記のいずれかの表見代理が成立する場合には、連帯保証人は連帯保証債務の履行を強いられるおそれがあります。
債権者が表見代理による連帯保証契約の成立を主張してきた場合、適切な反論を行うため、速やかに弁護士までご相談ください。 - ① 代理権授与の表示による表見代理(民法第109条第1項)
3、連帯保証契約の無効を主張する方法
身に覚えのない連帯保証債務の履行を迫られた場合、債権者に対して連帯保証契約の無効を主張しましょう。
連帯保証契約の無効を主張するための方法としては、主に以下の2通りが考えられます。
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(1)反論の内容証明郵便を送付する
請求を止めるように債権者に対して積極的に働きかけたい場合には、反論の内容証明郵便を送付することが考えられます。
連帯保証契約が締結された経緯について全く知らない旨を記載して送付し、債権者側がどのように返答してくるかを見極めつつ対応しましょう。 -
(2)債権者の訴訟提起を待って対応する
債権者の請求を受けて、どのように対処してよいかわからない場合は、債権者側からの訴訟提起を待って対応することも有力です。
ただしその場合でも、債権者に対する反論材料をできる限り集めておき、実際に訴訟に発展した場合には適切に対応できる状態で待ち構えましょう。
4、勝手に連帯保証人にされたら弁護士に相談すべき理由
親族や知人によって勝手に連帯保証人にされ、債権者から請求を受けた場合には、お早めに弁護士へご相談いただくことをおすすめします。
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(1)無効主張の法律構成や証拠収集についてアドバイスを受けられる
債権者は最終的に、連帯保証債務の履行を求めて訴訟を提起してくることが想定されます。
裁判所に請求を棄却してもらうためには、連帯保証契約が不成立・無効であるという心証を裁判所に与えなければなりません。
弁護士にご相談いただければ、裁判所の判断傾向を踏まえて、連帯保証契約の無効を主張するための法律構成や証拠収集についてアドバイスします。 -
(2)内容証明郵便の送付や訴訟対応などを一任できる
内容証明郵便の送付や訴訟への対応は、不慣れな方にとっては煩雑で難しい部分があります。
弁護士は、債権者対応や裁判所での手続きを一括して代行しますので、依頼者のご負担を大きく軽減することが可能です。
また、法律上の請求や訴訟手続きに通じた弁護士が対応することにより、身に覚えのない請求が認容されるリスクを大幅に低減できます。
心当たりのない連帯保証債務の履行を受けた場合には、速やかに弁護士までご相談ください。
5、まとめ
親族や友人によって勝手に連帯保証人にされた場合、同意のない連帯保証契約は原則として無効となります。ただし、債権者側を保護すべき一定の事情が存在する場合には、表見代理によって連帯保証債務を負担する可能性がある点に注意が必要です。
ベリーベスト法律事務所は、依頼者が理不尽な支払いを強いられることのないように、法的な観点から親身にサポートします。
債権者対応や訴訟対応についても、弁護士が一括代行しますので、安心してご依頼いただけます。
身に覚えのない連帯保証債務の請求を受けた場合には、お早めにベリーベスト法律事務所へご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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