わいせつな行為をした教員は復職できない? 性犯罪による影響範囲
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越谷市には31の小学校と16の中学校があり、多数の方が教員として勤務しています。
教員による児童・生徒へのわいせつ行為・性犯罪・セクハラ行為が大きな社会問題になっているなか、学校現場におけるわいせつ行為のほかにも、私生活におけるわいせつ行為の容疑をかけられてしまうと、どうなってしまうのかと不安を抱えている方もいるでしょう。
本コラムでは、教員がわいせつな行為をはたらいてしまった場合に問われる罪や教員として受けることになる処分などを、ベリーベスト法律事務所 越谷オフィスの弁護士が解説します。懲戒処分を受けた際に復職できる条件についても紹介しましょう。
1、「わいせつ行為」や「性犯罪」にあたる行為と適用される犯罪
文部科学省は、教員による児童・生徒に対するわいせつ行為について「決してあってはならないこと」とし、厳正に対処する姿勢を示しています。
ここで挙げるような行為は、児童・生徒に対する性暴力として厳しく処罰されるものと考えておくべきです。
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(1)胸など身体に触れる行為|強制わいせつ罪
教育現場において、身体の接触を完全に避けることは不可能だといえます。しかし、胸や陰部といった人の性的な部位、衣服で隠されていない素肌の部位などに触れる行為は、刑法第176条の「強制わいせつ罪」に該当するおそれがあります。
強制わいせつ罪は「暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をした者」を罰する犯罪ですが、必ずしも暴力や脅しを要するわけではありません。過去の判例に照らすと、年齢・素行・経歴・時間や場所・環境などと相伴って相手の抵抗を不能、または著しく困難にすれば「暴行・脅迫があった」と評価されます。
大人と子ども、男性と女性、児童・生徒が抵抗できない状況下におけるわいせつ行為は、まさに強制わいせつ罪にあたる行為といえるでしょう。また、相手が13歳未満の場合は、暴行・脅迫がなかったとしてもわいせつな行為があれば本罪の処罰対象です。
有罪になると、6か月以上10年以下の懲役に処されます。 -
(2)セックスや性交類似行為|強制性交等罪・児童買春罪
暴行・脅迫を用いて性交・肛門性交・口腔性交をした者は、刑法第177条の「強制性交等罪」に問われます。
考え方は強制わいせつ罪と同じなので、児童・生徒が抵抗できない状況下でセックスや性交類似行為に及べば本罪の処罰対象です。また、13歳未満が相手となった場合は、暴行・脅迫の有無にかかわらず強制性交等罪が成立します。
有罪になれば5年以上の有期懲役が科せられる重罪です。
なお、児童・生徒に対して、対償を供与、またはその供与を約束したうえで性交や性交類似行為に及んだ場合は「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(通称:児童ポルノ・児童買春禁止法)」に定められている「児童買春罪」に問われます。
金銭の支払いや物品を買い与える約束などを交わしてセックスをしたり、性器・肛門・乳首などを触ったり、自身の性器を触らせたりすると、5年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられます。 -
(3)更衣室などの盗撮行為|迷惑防止条例違反・児童ポルノ罪
通常は衣服で隠されている下着や身体を撮影する行為やその撮影目的で隠しカメラなどを設置するなど、わいせつ目的の「盗撮」は、都道府県が定める「迷惑防止条例」に違反する行為です。
埼玉県でも「埼玉県迷惑行為防止条例」が定められており、第2条の2第1項1号において学校などにおける盗撮行為が禁止されています。有罪になると、1年以下の懲役または100万円の罰金が科せられるうえに、「常習」と判断されれば懲役の上限が2年に引き上げられます。
また、児童・生徒の盗撮画像を所持していると、児童ポルノ・児童買春禁止法の「児童ポルノ所持罪」にも問われます。罰則は1年以下の懲役または100万円以下の罰金です。 -
(4)同意のうえでのわいせつ行為や性交など|青少年健全育成条例違反
たとえ児童・生徒が同意したうえであっても、わいせつな行為や性交などがあると、都道府県が定める「青少年健全育成条例」の違反となります。いわゆる「淫行条例」と呼ばれる規定です。
埼玉県青少年健全育成条例では、第19条で「淫らな性行為等の禁止」として、18歳未満の者との性行為やわいせつな行為を禁じています。罰則は2年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
2、わいせつ行為をした教員が受ける処分
教員が自校・他校・卒業生を問わず、児童や生徒に対してわいせつな行為をはたらいた場合は、厳しい処分を受けることになります。
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(1)懲戒免職を受ける
児童・生徒に対してわいせつな行為に及んだ教員は、各都道府県・指定都市の教育委員会の懲戒処分基準にのっとって「懲戒免職」の処分を受けます。懲戒免職は公務員に対する懲戒処分のなかでも最も重い処分です。
公務員としての職を強制的に剝奪されることになり、人事院・人事委員会が認定した場合は退職手当も支給されないまま即日で免職されます。
文部科学省の指導にもとづいて、日本全国の自治体で同様の運用がなされているため「地域によっては懲戒免職されない」といった差はありません。また、私立の学校においても、規定によって「懲戒解雇」を受けるおそれが高いでしょう。 -
(2)教員免許の失効・取上げを受ける
公立学校の教員がわいせつな行為などで禁錮以上の刑罰を受けた場合や、懲戒免職された場合は、教育職員免許法第10条の規定によって教員免許が「失効」します。また、私立学校の教員でも、同様の理由で解雇されると教員免許の「取上げ」を受けます。
教員免許の失効・取上げを受けると、当然、教壇に立つことは許されません。 -
(3)40年間にわたって失効・取上げの情報が残る
従来の制度では、児童・生徒に対してわいせつな行為をはたらき懲戒免職や解雇された場合でも、教員免許の失効・取上げを受けた経歴が明らかではありませんでした。
すると、改めて免許を受けたうえで別の地方へと移住し、再び教員として採用される可能性も考えられます。このような現状から、文部科学省は教員採用権者に対して提供している「官報情報検索ツール」で検索できる情報を直近3年から「直近40年」へと大幅に拡大しました。
このようなシステムが整っているため、たとえ再免許を受けても、過去に失効・取上げを受けた事実は必ず発覚します。また、このシステムでは、失効・取上げの理由も明示されます。つまり、児童・生徒に対するわいせつ行為が理由となって厳しい処分を受けた経歴を隠すことはできないのです。
3、懲戒免職を受けた教員が復職できる条件
児童・生徒へのわいせつ行為が発覚して懲戒免職を受けても、一定の条件を満たせば復職が可能です。
ただし、厳しく非難される行為が理由となって厳しい処分を受けているうえに、文部科学省は原則として「再び教壇には立たせない」という姿勢を示しているため、復職は容易ではありません。
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(1)欠格期間が経過すれば再免許は可能
教育職員免許法第5条では、教員免許の失効・取上げを受けた者の欠格期間を「3年」と定めています。
欠格期間中は、教員免許を持たない状態と同じなので、そもそも採用試験を受験することさえ認められません。また、学校教育法第9条にも、やはり失効・取上げを受けて3年が経過しない者は教員になることができないと明記されています。
ただし、欠格期間を過ぎれば法律上は再免許の取得が可能であり、自治体が採用すれば再び教壇に立つことは可能です。
たとえば、教育職員免許法第10条には、懲戒免職のほかにも「禁錮以上の刑に処されたとき」は教員免免許が失効する旨が定められています。たとえば、マイカーの運転中に人身事故を起こして執行猶予つきの懲役刑を受けた場合は、禁錮以上の刑になるので教員免許の失効は免れません。
すると「もう二度と教壇に立てないのでは?」と不安になるかもしれませんが、欠格期間の3年を経過したあとで再免許のための講習を受講・修了したうえで都道府県教育委員会に申請すれば、再免許が授与されます。 -
(2)「再免許の授与が適当」である場合に限る
児童・生徒に対するわいせつ行為で教員免許の失効・取上げを受けた者の再免許取得については、令和3年6月に公布された「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」に明記されています。
この法律では、特にわいせつ行為によって失効・取上げを受けた者を「特定免許状失効者」と定め、再免許について厳格なルールを設けました。
同法第22条は、特定免許状失効者の再免許について次のように定めています。- 失効・取上げの原因となったわいせつ行為などの内容を踏まえて、本人の改善更生の状況やその後の事情により、再免許の授与が適当である場合に限る
- 都道府県教育委員会が再免許を授与する際は、都道府県の再授与審査会の意見を聴かなければならない
- 他の都道府県で失効・取上げを受けた者について再免許を授与する際は、失効・取上げの処分を下した都道府県に対して事案の内容などを照会できる
つまり、欠格期間の3年が経過し、再免許を申請しても、教育委員会や再授与審査会が認めない限り、再び教壇に立つことは許されません。文部科学省が強い姿勢を示している以上、再免許は容易ではないと心得ておくべきです。
4、児童・生徒へのわいせつ行為で容疑をかけられたときに取るべき行動
児童・生徒に対するわいせつ行為の容疑をかけられてしまうと、懲戒免職・解雇される危険が極めて高くなります。一定期間が経過すれば法律上は再免許が可能ですが、わいせつ行為が理由となった場合は「特定免許状失効者」として特に厳しい対応を受けるため、再免許は難しいでしょう。
教員免許の失効・取上げや厳しい刑罰を受ける事態を避けるには、素早いアクションと弁護士のサポートが必須です。
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(1)弁護士に対応をまかせる
わいせつ行為の容疑をかけられてしまった場合は、まず弁護士に相談し、詳しい状況を説明したうえで、すべての対応をまかせるのが賢明です。
法律の知識や経験が豊富な弁護士に一任することで、容疑をかけられたトラブルが実際にわいせつ犯罪や性犯罪にあたるのかを正確に判断できます。また、懲戒処分の基準に合致する行為であるのかどうかも判断できるので、懲戒免職を受ける危険度を計ることも可能です。
逮捕・刑罰を避けるための捜査機関に対するはたらきかけや、懲戒処分の軽減を求めた学校・教育委員会との交渉も期待できます。 -
(2)児童・生徒の保護者を含めた示談交渉を進める
わいせつ行為の容疑をかけられてしまったとき、事態を穏便に解決できる最も有効な手段が「示談」です。本来、わいせつ犯罪や性犯罪の示談交渉では、被害者本人と話し合いを進めることになりますが、被害者が児童・生徒である場合は、その保護者を含めた交渉になるでしょう。
もちろん、わが子がわいせつ行為の対象となった親・保護者は強い憤りを感じているものなので、交渉は容易ではありません。容疑をかけられてしまった教員本人や学校関係者が交渉をもちかけても、一切相手にしてもらえない可能性が高いといえます。
児童・生徒・保護者との示談交渉は、公正な第三者である弁護士に一任したほうが安全です。素早く解決できれば、懲戒免職や刑罰といった大きな不利益を受けることもなく、トラブルを穏便に解決できる可能性もあります。
5、まとめ
教員による児童・生徒へのわいせつ行為について、国は厳しい姿勢をとっています。わいせつ行為をはたらいたことが事実であり、トラブルが表沙汰になってしまえば、懲戒免職や解雇、教員免許の失効・取上げといった不利益は避けられません。事実でなければなおさら、そのまま放置するわけにはいかないでしょう。
児童・生徒に対するわいせつ行為の容疑をかけられてしまった場合は、スピード解決を目指す必要があります。直ちに刑事事件解決に向けた知見が豊富なベリーベスト法律事務所 越谷オフィスへご相談ください。懲戒免職や解雇、教員免許の失効・取上げ、逮捕や刑罰といった不利益の回避に向けて全力でサポートします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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