遺留分がもらえない場合がある? 原因や対処法を弁護士が解説
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埼玉県の統計によると、2022年の越谷市の死亡数3573人で死亡率は10.3人(人口1000人当たり)と、全国平均の12.9人より低い傾向にあります。
被相続人が亡くなれば、相続が発生しますが、遺言の内容によっては遺留分の請求を検討する方もいらっしゃるでしょう。しかし、相続人なのに遺留分をもらえないケースもあります。
この記事では、遺留分をもらえないケースや、遺留分がもらえない場合の対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 越谷オフィスの弁護士が解説します。
1、そもそも遺留分とは?
そもそも「遺留分」とは、一定の法定相続人に最低限保証された相続財産の取り分のことをいいます。
被相続人(亡くなった方)は、原則、遺言によって自身の財産を自由に処分することができますが、そのような遺言の自由を制限して、相続人が必ず得ることができる相続分の割合を遺留分といいます。
そのため、被相続人が遺言で、「遺留分を放棄するように」「遺留分侵害額請求をしないでほしい」などと記載していたとしても、相続人に対する拘束力はありません。
ただし、遺留分が保障されているのは、すべての相続人ではなく民法に規定されている相続人のみです。
具体的に遺留分を有する相続人の範囲は、以下の通りです(民法第1042条1項、第887条1項、第889条1項、第890条)。
- 被相続人の子およびその代襲者
- 被相続人の直系尊属
- 被相続人の配偶者
遺留分の権利は被相続人の兄弟姉妹を除きます。
遺留分の割合については、以下の通りです。
- 直系尊属(親や祖父母)のみが相続人である場合:3分の1
- 上記以外の場合:2分の1
遺留分の対象となる財産は、以下のものになります。
- 遺贈する財産:遺言によって特定の人に譲られる財産
- 死因贈与する財産:被相続人が亡くなったら譲られることが約束されている財産
- 生前贈与した財産:生前に譲られた財産(原則相続開始前の1年間)
これらの財産は、遺留分の計算を適正に算出するため、事前に調べておく必要があります。
相続人が遺留分をもらえないケースは、以下のような場合があります。
以下、詳しく解説していきます。
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(1)そもそも遺留分権利者ではない
遺留分が認められているのは、被相続人の兄弟姉妹以外の相続人および代襲相続人です。
兄弟姉妹・甥・姪、叔父・叔母などは、そもそも遺留分権利者ではないため、遺留分侵害額請求を行うことはできません。 -
(2)生前贈与などによって遺留分を算定するための財産がすでに残っていない
被相続人が生前贈与をしたタイミングによっては、遺留分を算定する財産が残っていない可能性があります。
たとえば、10年以上前の生前贈与により、相続財産がまったく残っていないケースなどの場合には、被相続人・受贈者双方が遺留分を侵害すると知っていた場合を除き、遺留分の算定の基礎には含まれません(民法第1044条1項)。 -
(3)相続欠格や相続廃除によって相続権がない
「相続欠格」とは、相続人が特定の罪を犯した場合、相続権が自動的にはく奪される制度です。
相続欠格事由(民法891条)は、以下の通りです。- 被相続人や他の相続人を殺害したり未遂を行ったりして、有罪判決となった
- 被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破壊し、または隠匿した
また、「相続人の廃除」とは、一定の相続人から相続権をはく奪する制度です(民法第892条)。以下のケースにおいて、被相続人が、相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができます。
- 被相続人に対して虐待をした、重大な侮辱を加えた
- 推定相続人その他著しい非行があった
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(4)相続放棄をしている
「相続放棄」とは、相続人が相続財産を受け継ぐことを拒否し、はじめから相続人でなかった効果を生じさせる意思表示のことを指します。相続放棄は、家庭裁判所に申立てることによって行います。相続放棄が認められた後は相続人ではなくなるため、遺留分侵害額請求権も失うことになります。
なお、相続放棄は相続の開始を知ったときから3か月以内に行う必要があります。 -
(5)他の相続人が財産を隠している、使い込んでいる
特定の相続人が遺産を隠している場合や使い込んでいる場合も、適切に遺留分侵害額請求をすることができません。当該相続人が隠している財産や使い込んでいる財産の全貌を明らかにする必要がありますが、事実上調査が難しい可能性もあります。
2、遺留分がもらえない場合の対処法
遺留分の権利を有しているのに、遺留分を受け取ることができない場合はどうすればよいのでしょうか。遺留分がもらえない場合の対処法を解説していきます。
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(1)遺産分割協議を求める
有効な遺言が存在する場合であっても、相続人全員の同意があれば、遺言と異なる遺産分割を行うことが可能です(民法第907条1項)。
遺産分割協議は相続人全員で行う必要があり、一人でも抜きにして進めてしまうと、分割協議は原則として無効となります。 -
(2)遺留分侵害請求権を行使する
遺言により、自己の遺留分を侵害されている場合には、遺留分侵害額請求権を行使できます。遺留分侵害額請求権は形成権と呼ばれ、受遺者または受贈者に対する意思表示によって、法律上当然に効力が発生します。
したがって、必ずしも裁判を起こして請求する必要はありません。 -
(3)遺言書の無効を主張する
遺言により、特定の相続人のみに遺産を独占させる場合には、他の相続人の遺留分が侵害されることになります。ただし、法的に有効な遺言でなければ、遺言の効力は発生しません。
たとえば、以下の問題点がある場合には、遺言の無効を主張できる可能性があります。- 遺言作成当時、遺言者に意思能力がなかった
- 自室証書遺言の形式的要件を満たしていない
- 遺言者以外の第三者が遺言を偽造・変造した疑いがある
- 第三者による脅迫や詐欺により遺言が作成された疑いがある
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(4)使い込みの場合には不当利得・不法行為を主張する
特定の相続人が遺産を隠匿・使い込みしていた場合には、不当利得返還請求や不法行為に基づく損害賠償請求をする必要があります。
そのためには、まずは隠匿・使い込みの証拠を収集することが重要です。たとえば、被相続人名義の金融機関口座の取引履歴を開示すると、使い込みの事実が発覚する可能性があります。
3、遺留分権利者ではない相続人が財産を受け取りたいときの対策
被相続人の兄弟姉妹などの場合には、そもそも遺留分権利者ではありません。しかし、寄与分を主張することで一定の財産を受け取れる可能性があります。
相続人の寄与分とは、共同相続人の一部が、被相続人の財産の維持や増加について特別の寄与をした場合において、その貢献を考慮した上乗せを認める制度です(民法904条の2)。
同じ相続人の中でも、以下のケースに該当すれば、相続分に寄与分を加えた額を受け取ることができます。
- 被相続人の事業に労働力、または財産を提供した
- 被相続人の療養や看護をした
- 被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をした
4、相続トラブルを弁護士に相談するメリット
相続に関するもめ事は、意外に長引くケースも少なくありません。早めに弁護士に相談することで以下のメリットがあります。
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(1)遺留分の請求に関する手続きを任せられる
遺留分侵害額請求をするには、他の相続人に対して請求を行う必要があります。
しかし、相続人同士がもともと不和であったり、良好な関係であっても、請求を機に争いが発生したりする可能性もあります。相手が遺留分の支払いに応じない場合には、調停や訴訟など裁判手続きを利用する必要があります。
裁判手続きにおいては書面や証拠を適宜、適切な方法で提出する必要がありますが、弁護士に依頼することで、これらの必要な手続きすべてを任せることができます。 -
(2)相続トラブルをスムーズに解決してもらえる
弁護士に依頼することで、迅速に紛争解決ができる可能性が高まります。相続人同士の仲が悪く、紛争が複雑化した事案であっても、相続トラブルに詳しい弁護士に介入してもらうことで、交渉がスムーズに進められることもあります。
相手方との話し合いや連絡についても、代理人弁護士に任せておけるため、ご本人の精神的な負担も軽減できるでしょう。
お問い合わせください。
5、まとめ
遺留分を受け取れないのではないかと悩んだら、まずは遺留分がもらえないケースに該当していないか確認し、そのうえで適切な対処法をとる必要があります。
また、適切な遺留分侵害額を計算したうえで遺留分侵害額請求を行使したい場合には、相続問題の実績がある弁護士に相談するのが安心です。
ベリーベスト法律事務所 越谷オフィスには、相続トラブルの解決実績がある弁護士が在籍しております。「遺留分がもらえないのではないか」とお悩みの際は、まずはお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています