相続における土地の分筆とは|メリット・デメリットと手続の流れ

2024年09月25日
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相続における土地の分筆とは|メリット・デメリットと手続の流れ

国が公表した令和5年地価公示によれば、埼玉県内の住宅地は需要が堅調で、埼玉県全体で前年比1.6%、越谷市では前年比1.9%地価が上昇しています。

住宅地などの土地を相続した場合、複数の相続人がその取得を希望することもありますが、土地に関しては物理的に分けて遺産分割することも可能です。一つの土地を複数の土地に分けることを「分筆」といいますが、土地を分筆する際には注意が必要な点もあります。

今回のコラムでは、遺産の土地を分筆する方法や、分筆のメリットやデメリットなどについて、ベリーベスト法律事務所 越谷オフィスの弁護士が解説します。


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1、土地の分筆とは?

一つの土地を複数に分ける「分筆」とはどのような手続なのか解説します。

  1. (1)共同相続した土地を分割する方法の一つ|分筆

    被相続人が所有していた土地などの不動産は、相続の開始により、すべての相続人が共有する状態になりますが、共有状態を解消するためには、遺産分割をする必要があります。

    不動産を遺産分割する際には、以下のいずれかの方法がよく用いられます。

    • 現物分割:特定の相続人が不動産を取得して、他の相続人が不動産以外の財産を取得する
    • 代償分割:特定の相続人が不動産を取得して、他の相続人に代償金を支払う
    • 換価分割:不動産を売却して、代金を分け合う


    土地に関しては、1個の土地を複数に分けることが可能なので、現物分割の一つの形態として、土地を「分筆」して複数の相続人がそれぞれを取得することも可能です。

  2. (2)分筆と分割の違い

    1個の土地を複数に分ける方法は、分筆と分割の2つがあります。

    分筆は、不動産登記簿上、分けた土地が別の土地として登記される方法です分筆登記をすると、分けた土地には新たに地番が付与され、所有権などの権利関係が登記できます

    複数の相続人で土地を分け合う場合は、それぞれが自由に利用したり処分したりできるように分筆するケースがほとんどです。

    分割は、分筆の手続を行わずに、同じ土地上に2軒の建物を建築する際、建築基準法に適合させる目的で区画を分けることをいいます。

    たとえば、親の自宅がある敷地内に子ども用の住居を新築する場合、建築基準法に適合するように区画を分ければ新築が可能なので、面倒な分筆は行わないようなケースです。

  3. (3)筆界とは?

    土地の登記簿で表示される1個土地は「1筆」と言われることもありますが、「筆」という単位は登記簿上の土地の個数として用いられます。

    また、その土地が登記された際に土地の範囲を定めた境界を「筆界」といいますが、筆界は分筆や合筆(複数の土地を合体させること)によって初めて変動します。つまり、分筆は1筆の土地に新たな筆界を設けて、複数筆の土地に分けることということもできます。

  4. (4)分筆するためには隣地との筆界確認も必要

    土地を分筆する際には、新たに設ける筆界だけではなく、分筆前の土地と隣地との筆界を確認する手続も必要です

    隣地との筆界確認は、隣地の所有者の立ち会いのもとで筆界を確認し、「筆界確認書(筆界確認情報)」を作成するのが原則です。

    隣地の所有者の協力が得られない場合、かつては時間と費用がかかる境界確定訴訟を提起する必要がありましたが、平成18年に新設された法務局の「筆界特定制度」を利用して、比較的迅速に手続が進められるようになりました。

    法務局に筆界特定の申請をすると、筆界特定登記官と民間の専門家である筆界調査委員が土地の現況や資料の調査を行い、分筆の際に必要な筆界の特定をしてもらうことができます。

    さらに、法務省の運用変更により、筆界確認の手続は以下のように緩和されています。

    • 法務局に精度の高い地積測量図などがある場合は境界確認が不要に
    • 隣地を多数の相続人が共有している場合は、占有者の立ち会いで筆界確認が可能に
    • 筆界確認書には、隣地所有者の実印の押捺や印鑑証明書の添付を求めない


2、相続時に土地を分筆するメリット・デメリット

遺産分割で土地を複数に分ける際に分筆するメリットとデメリットについて解説します。

  1. (1)分筆のメリット

    複数の相続人が同じ土地を相続したい場合には、土地を分けて相続するのが相続人の希望にもかなう明快な方法といえます。そのほかのメリットは以下のとおりです。

    ① 単独で所有して自由に処分できる
    土地を分筆して相続すると、それぞれが登記簿上独立した土地を単独で所有することができます。相続後に土地を売却したり抵当権を設定して融資を受けたりする際も、所有者の判断で自由に行うことが可能です。

    ② 土地の用途に合わせて地目を変更できる
    土地の登記簿には、その用途を表す「田」「畑」「宅地」「雑種地」などの地目も登記されています。

    たとえば地目が「田」の土地を相続した場合、分筆後の土地の地目も「田」となりますが、住宅用地として利用したい相続人は、地目を「宅地」に変更することもできます。

    ただし、「田」と「畑」の地目を「宅地」に変更する場合は、農業委員会から農地転用許可を受ける必要があります。土地が所在する場所によっては、農地転用許可が難しい場合もあるので、事前の情報収集が必要です。

    ③ 固定資産税や相続税が安くなる可能性がある
    土地を分筆して面積が小さくなると、土地の用途が限られたり、公道との接地面積が小さくなったりして利便性も低下することから、土地の評価額が下がりやすくなります。

    一方、土地の評価額が下がると、固定資産税や相続税の負担が軽くなるという面ではメリットといえます。

  2. (2)分筆のデメリット

    分筆のデメリットは以下のとおりです。

    ① 手続に時間と費用がかかる
    測量や筆界が確定されていない土地を分筆する際には、土地家屋調査士などの専門家に 測量や隣地との筆界確認、境界標の設置などを依頼する費用として数十万円単位の費用がかかります。

    また、隣地の所有者の協力が得られない場合は、法務局の筆界特定精度を利用することになりますが、最低でも6か月程度の期間がかかります。

    ② 建物を建てられなくなる可能性がある
    分筆した土地に建物を建築する場合は、建築基準法の接道義務、建蔽(けんぺい)率、容積率の三点に注意が必要です。

    接道義務とは、建築物の敷地は、幅4メートル以上の道路に2メートル以上接する必要があるということです。

    建蔽率と容積率は、敷地面積に対する建築面積や延べ床面積の割合で、分筆後の面積が小さいと建物の面積や間取りに制約が生じることになります。

    また、建物を建築する敷地は、自治体によって定められた最低敷地面積以上の面積が必要とされており、土地が所在する場所によって最低敷地面積が異なる場合もあるので、注意が必要です。

    ③ 建物がない土地は固定資産税が高くなる
    人が居住する建物の敷地の固定資産税は、面積200平方メートル以下の部分について課税標準額を6分の1に減額する特例措置(小規模宅地の特例)が適用されています。

    しかし、1棟の住居が建っている土地を分筆した場合、建物がないほうの土地にはこの特例措置が適用されなくなるため、固定資産税の負担が大きくなってしまいます。

3、土地の分筆の流れ

土地を分筆する際の手続の流れは以下のとおりです。

  1. ① 土地家屋調査士に相談・依頼
    分筆の手続は、測量などの専門的知識と技法が必要になるため、土地家屋調査士に依頼して行うのが一般的です。以下の手続はすべて土地家屋調査士に依頼することができます。

  2. ② 法務局・役所での調査(公図、地積測量図、登記事項証明書、確定測量図)
    土地の登記情報や公図などの資料を確認し、権利関係や筆界に関する情報を収集します。

  3. ③ 現地立ち会い(役所・隣地土地所有者)、筆界確認
    役所や隣地土地所有者の立ち会いのもと、筆界を確認します。

  4. ④ 確定測量図の作成
    確認した筆界に境界標を設置して確定測量を行い、確定測量図を作成します。

  5. ⑤ 分筆案の作成
    分筆後の土地の面積や筆界線を記載した分筆案を作成します。相続人は、土地家屋調査士が作成した分筆案を検討し、相続人の誰がどの土地を取得するのかを協議して、遺産分割協議書を作成します。

  6. ⑥ 境界標の設置
    分筆後の土地の筆界に境界標を設置します。

  7. ⑦ 登記申請書類の作成・提出
    分筆登記に必要な書類を作成して、法務局に提出します。なお、相続人への登記名義の変更は、遺産分割協議書を作成した後に、被相続人から各相続人へ移転する相続登記を申請するのが一般的です。


また相続登記の申請は、土地家屋調査士が行うことはできないので、司法書士に依頼するのが一般的です。ベリーベスト法律事務所には実績ある司法書士も在籍しております。弁護士による相続トラブル解決も含めてワンストップで対応が可能です。まずはお気軽にご相談ください。

4、相続手続は弁護士へご相談を

相続のトラブルでお悩みの方や、相続手続をスムーズに進めたいとお考えの方は、弁護士のサポートを受けることをおすすめします

  1. (1)不動産の相続は揉めることが多い

    遺産に不動産が含まれるケースでは、相続人の希望が折り合わないことが多く、遺産分割が難航しがちです。土地を分筆することにした場合でも、どのように分けるのか、誰がどの部分を取得するのかで揉めることもあります。

    弁護士は、不動産の遺産分割をサポートした経験が豊富なので、第三者的な視点から公平な相続を実現するために適切なアドバイスをすることが可能です。

  2. (2)相続手続の期限を意識して効率よく進めることができる

    相続の手続には各種の期限がありますが、相続の開始から10か月後が期限となる相続税の申告、納付までの期間が遺産分割をまとめる目安となります。

    土地の分筆を行う場合は、土地家屋調査士に依頼してから数か月程度かかることが多いため、より効率的に相続手続を進める必要があります。

    相続人になると、不慣れな作業や手続をこなすことになりますが、弁護士は期限を守りながら効率的に手続を進めるお手伝いをいたします。

  3. (3)相続手続を放置するとペナルティも

    不動産を相続しても遺産分割が行われないまま放置されるケースが多かったことを受けて、相続登記の義務化や、空き家対策の強化などの対策が進められています。

    相続した不動産を放置すると、金銭の納付を命じられる過料の制裁や、固定資産税が高くなるなどの不利益を受けることもあります。相続人になったけれども何から手をつければいいのか分からないという場合は、できるだけ早く弁護士に相談することをおすすめします

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5、まとめ

複数の相続人で土地を相続した場合は、土地を分筆して分け合うのも選択肢の一つとなります。分筆して単独で所有することになれば、売却や抵当権の設定など自由に処分することができますが、建物を建築することを検討している場合は、建築基準法や自治体の条例で規制を受けることがあるので、事前の情報収集の重要です。

なお、分筆の手続には一定の時間と費用が必要になるので、より効率的に相続手続を進める必要があります。

ベリーベスト法律事務所では、相続手続の進め方が分からない、トラブルを防ぎたいなど、相続に関するご相談を随時受け付けております。また、弁護士と司法書士、税理士など各分野の専門家がチームとなってサポートするワンストップサービスを提供しており、ご好評をいただいております。

まずはベリーベスト法律事務所 越谷オフィスまでお気軽にご相談ください。

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