二次相続はもめやすい? 兄弟のみが相続人になる場合の注意点
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越谷市が公表している人口に関する統計資料によると、令和2年の越谷市の死亡者数は、3028人でした。死亡者数は年々増加傾向にあり、3000人を超えたのは昭和31年以降初めてです。
人の死亡によって相続が開始しますが、夫婦は年齢が近いこともあり、一方の配偶者が死亡した後、すぐに他方の配偶者も死亡するという事態が生じることがあります。夫婦の子どもからみれば、一次相続と二次相続が立て続けに起こることになりますが、このような二次相続が生じた場合には、兄弟間で争いになることがあります。
本コラムでは、二次相続でトラブルが生じやすい理由やトラブルを防ぐための対策などについて、ベリーベスト法律事務所 越谷オフィスの弁護士が解説します。
1、二次相続が発生するケース
二次相続とは、一次相続で被相続人の遺産を相続した相続人が死亡し、その相続人の遺産を一次相続の相続人で分けることをいいます。
たとえば、父、母、長男、次男という家庭において、まず、父が死亡したとします。
そうすると被相続人である父の遺産は、母、長男、次男の3人で分けることになります。そして、その後、母が死亡すると、母の遺産を長男と二男で分けることになります。
このケースのように最初の父親の相続のことを「一次相続」といい、その後に生じる母親の相続のことを「二次相続」といいます。
なお、長男が母よりも先に死亡しており、長男に子どもがいる場合には、「代襲相続」によってその子どもが相続人になります。
2、二次相続における法定相続分の考え方
二次相続における法定相続分はどのようになるのでしょうか。以下では、一次相続と二次相続に分けて説明します。
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(1)一次相続の相続分
上記のケースと同様に父、母、長男、次男という家庭において、父の死亡という一次相続が発生したケースを例にして説明します。
相続が開始した場合の法定相続分については、民法に明確に規定されていますので、民法の規定に従って具体的な相続分を判断していくことになります。
上記のケースでは、配偶者は常に相続人となり、子どもが第1順位の相続人となります。
そして、配偶者の法定相続分が2分の1、子どもの相続分が2分の1になりますので、それぞれの法定相続分は、以下のようになります。- 母:2分の1
- 長男:4分の1
- 次男:4分の1
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(2)二次相続の相続分
上記のケースで、母が死亡した場合には、母の相続人は子どもである長男と二男のみになります。
長男と二男で法定相続分には違いはありませんので、以下のようにそれぞれ等しい相続割合で母の遺産を相続することになります。- 長男:2分の
- 次男:2分の1
なお、二次相続は夫婦間で生じるものですので、年齢の近い夫婦では一次相続からすぐに二次相続が生じるということもあります。
そうすると、一次相続の遺産相続が未了の間に、二次相続が生じるということも珍しくありません。
この場合には、死亡した一次相続の相続人の地位を二次相続の相続人が引き継ぐことになりますので、基本的には、法定相続人の範囲や相続分については、変化はありません。
すなわち、上記の例では、母が相続した2分の1の相続分を長男と二男が2分の1ずつ相続することになるのです。
3、二次相続では問題起きやすい?
二次相続では、一次相続に比べてトラブルが生じやすいといわれています。
その理由としては、以下のようなものが挙げられます。
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(1)両親が他界しているため仲裁役がいない
一次相続の場合には、どちらか一方の親が健在であるため、遺産分割協議において親が主導して遺産分割方法を決めることが多く、相続人同士でトラブルが生じることは少なくなります。
遺産分割方法に不満がある相続人がいたとしても、親が仲裁役となって調整をすることによって、深刻な争いを回避することが可能になるためです。
しかし、二次相続では、既に両親が他界しているため残された兄弟姉妹で両親の遺産の分け方を決めていかなければなりません。
遺産分割の方法についてお互いの意見の対立が生じると一次相続のような仲裁役がいないことから兄弟間で深刻な対立が生じる可能性があります。また、一次相続では、配偶者に大部分の遺産を相続させることが多いため、二次相続になると一次相続の遺産と二次相続の遺産がまとまって遺産分割の対象になります。
そのため、相続財産が多く複雑になるという点も、二次相続がトラブルになりやすい要因といえます。 -
(2)相続税の基礎控除が減る
遺産を相続した場合には、相続財産の金額に応じて相続税の申告が必要になってきます。
相続税の計算にあたっては、基礎控除という金額があります。
相続税の申告が必要になるのは、相続財産の総額が基礎控除を上回っている場合です。基礎控除の金額=3000万円×(600万円×法定相続人の数)
このように、基礎控除の金額は、法定相続人の数に応じて決まってきます。そのため、法定相続人が減れば、それだけ基礎控除の金額も減ることになるのです。
一次相続と二次相続を比較すると二次相続の方が法定相続人の数が少なくなるため、相続税の基礎控除の減少による相続税申告や相続税の納付といった負担が生じることになります。 -
(3)配偶者控除を利用することができない
配偶者控除とは、配偶者が相続した遺産が1億6000万円まで、または配偶者の法定相続分までのいずれか大きい金額までは、相続税が課税されないという制度です。
配偶者控除を利用することによって、ほとんどのケースで相続税の負担をゼロにすることができるため、一次相続ですべての遺産を配偶者に相続させるという方法をとることもあります。
しかし、配偶者控除を利用することができるのは、あくまでも配偶者が生存している一次相続までです。
二次相続では、配偶者は既に死亡して存在しませんので、配偶者控除を利用することはできません。
二次相続では、一次相続によって配偶者が相続した財産に加えて、配偶者固有の遺産も相続財産に含まれることになりますので、非常に高額な相続税を負担しなければならない可能性があるのです。 -
(4)小規模宅地等の特例が利用することができない可能性がある
小規模宅地等の特例とは、亡くなった方が住んでいた土地などについて、一定の要件を満たした相続人が当該土地を相続した場合に、課税評価額が最大で80%減額されるという特例です。
配偶者であれば対象となる土地を相続するだけで小規模宅地等の特例を利用することができますが、配偶者以外の相続人が土地を相続する場合には、小規模宅地等の特例の適用要件が厳しくなります。
たとえば、被相続人の子どもが土地を相続する場合には、被相続人と同居しているなど要件が加算されることになりますので、独立して生計を立てている子どもの場合には、小規模宅地等の特例を利用することが難しくなるのです。
その結果、二次相続では、相続税の納付額が増加するという負担が生じる可能性があります。
4、二次相続トラブルを防ぐための対策
二次相続によるトラブルを防ぐためには、以下のような対策が有効となります。
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(1)一次相続で配偶者の取得する遺産を調整する
二次相続では、一次相続で配偶者が相続した遺産に配偶者固有の財産が上乗せされたものが相続財産となります。
一次相続で配偶者控除を利用することができるからといって、一次相続で配偶者が相続する遺産を増やしすぎると、その後の二次相続で課税される相続税が多くなってしまいます。一次相続だけ見れば相続税負担を抑えることができるかもしれませんが、一次相続と二次相続をトータルで見るとかえって損をしてしまう可能性もあるのです。
一次相続の遺産分割では、将来の二次相続をふまえながら、遺産分割割合を定めることが大切です。
ご自身で判断することが難しいという場合には、専門家である弁護士や税理士への相談をおすすめします。 -
(2)生前贈与
二次相続において親から子どもに対し多額の遺産の相続が予想されるという場合には、二次相続が発生するまでの間に、子どもや孫に対して生前贈与をすることによって相続税の負担を軽減することが可能です。
生前贈与をする場合には、贈与税が課税されることになりますが、年間110万円までの贈与であれば贈与税は課税されません。
そのため、贈与税が非課税となる年間110万円までの範囲で生前贈与を繰り返し行うことによって、将来二次相続によって生じる相続税を少なくすることができるのです。
もっとも、一次相続から二次相続までの期間が短いと生前贈与による相続税の節税効果は少なくなってしまうため、早めに相続税対策を講じることが重要です。 -
(3)小規模宅地等の特例を利用する
一次相続においては、配偶者だけでなく被相続人の子どもも被相続人の自宅に同居をしていた場合には、自宅を配偶者ではなく子どもが相続して小規模宅地等の特例を利用するという方法もあります。
一次相続では、配偶者は、配偶者控除によって小規模宅地等の特例を利用しなくても相続税が課税されることはほとんどありません。そのため、小規模宅地等の特例を有効に利用するのであれば、配偶者以外の相続人が自宅を取得することが有効な手段となります。それによって、二次相続の際に含まれる相続財産を減らすことができ、二次相続での相続税の負担を軽減することもできるようになるのです。 -
(4)生命保険の非課税枠の利用
遺産分割においては受取人の指定されている生命保険の死亡保険金は相続財産に含まれませんが、相続税の計算においては「みなし相続財産」として課税対象となります。
ただし、生命保険の死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」という非課税枠があります。
そのため、生命保険の非課税枠を利用することによって、相続税の課税対象財産を減らすことができるとともに、相続税の納税資金を確保することが可能になります。 -
(5)相次相続控除の利用
10年以内に連続して一次相続と二次相続が発生した場合には、相次相続控除を利用することによって二次相続の相続税額の負担を軽減することが可能です。
「いつ相続が発生するか」ということを予測することはできないため、相次相続控除の利用を見越して相続対策を講じるということは難しいとは言えます。
しかし、もし一次相続と二次相続が近接して発生した場合には、忘れずに相次相続控除を利用するようにしましょう。
5、まとめ
二次相続が発生すると、仲裁役の両親が存在しないことから、遺産分割をめぐって兄弟で争いになる可能性があります。
また、二次相続では相続税の負担が重くなる傾向にあります。
そのため、早めに対策を講じておくことが大切です。
将来に二次相続の発生が予想されるという方は、事前から、弁護士にアドバイスを受けることをおすすめします。
埼玉県越谷市や近隣市町村にお住まいの方は、ベリーベスト法律事務所 越谷オフィスまで、お気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています