生前贈与が節税・減税になる制度が終わるって本当? メリットを解説

2022年02月16日
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生前贈与が節税・減税になる制度が終わるって本当? メリットを解説

相続や贈与を行うと、税金を支払わなければならないケースがあることはご存じの通りです。越谷市に住民票がある場合は、越谷税務署で申告することになります。

そのため、資産や財産が多い方の中には「財産は残したいけれど相続税が心配」という方も多いのではないでしょうか。そのような場合は、適切に生前贈与をすることで、従来の方法で相続するよりも税金が安くなる可能性があることは広く知られてきました。しかし、贈与税の制度が今後改正され、生前贈与のメリットが失われてしまう可能性があると言われています。

そこで、今回は生前贈与の概要と手続き方法や注意点、令和3年12月24日に閣議決定された「税制改正の大綱」から、生前贈与の制度がすぐに変わるのかどうかも踏まえ、ベリーベスト法律事務所 越谷オフィスの弁護士が解説します。

1、生前贈与とは?

  1. (1)生前贈与の概要

    生前贈与とは、自分が生きている間に財産を譲り渡す行為です。通常、贈与をする際は相続税額よりも高い税率で課税されます。ただし、贈与税には基礎控除があるため、基礎控除額内で贈与を行うことで、財産を事前に少しずつ分配していくことができます。一般的には、この制度を利用して相続税を少しでも節約するために行われる贈与を、生前贈与と呼ばれています

    生前贈与は親族間のもめ事を防いだり節税できたりする可能性があり、利用方法を間違えなければ効果的な相続手法です。しかし、すべての人に生前贈与が向いているかというと、そうではありません。

  2. (2)生前贈与の制度は使えなくなる?

    令和3年の夏ごろから、各種メディアから「生前贈与の制度が使えなくなる」というニュースが多く流れました。なぜかといえば、令和2年12月10日に自民党が発表した「令和3年度税制改正の大綱」で、「(3)相続税・贈与税のあり方」として、教育資金などの一括贈与にかかる贈与税の非課税措置を見直すことが提言されていたためです。さらに、諸外国同様に相続税と贈与税を一体化することも踏まえ、本格的な検討を進めるとも記述されていました。

    なぜ相続税と贈与税を一体的にとらえるための検討が行われているのかといえば、要約すれば以下の理由が挙げられています。

    • ① 教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与は、多くの方にとっては課税対象とならない水準にあること
    • ② 資産のある方にとっては、節税的な利用につながっているという指摘があること
    • ③ 相続税と贈与税を一体的にとらえるのが国際基準であること
    • ④ 相続税と贈与税を一体的にとらえることで格差の固定化を防止し、中立的な税制を構築したいと考えていること


    令和3年12月10日に発表された「令和4年度税制改正大綱」でも、引き続き格差の固定化についての懸念について触れ、相続税と贈与税の一体化について検討を進めることが明言されています。

    ただし、現状において、具体的に税制が改正され、贈与税や所得税の制度が一体的になることが決定したわけではありません。したがって、数年後には廃止されるかもしれませんが、現状、生前贈与にメリットがあるといえる状況に変わりはないといえるでしょう。

  3. (3)生前贈与を検討すべき方

    生前贈与の利用を検討したほうがよい方は、相続税の基礎控除額「3000万円+600万円×法定相続人の数」を超えた相続が発生する方です。財産が多くなくても相続人に年々少しずつ贈与していくことで、相続税がかからないように対策していくことが可能です。

    ただし、前項の通りこの制度によるメリットは、近年中に失われる可能性があります。そもそも、駆け込み贈与による節税を防ぐために、相続が開始する3年以内に行われた贈与は相続税の課税対象です。生前贈与を行うのであれば、少しでも早いタイミングから始めたほうがよいと考えられます。

2、生前贈与のメリットやデメリットは?

  1. (1)生前贈与のメリット

    生前贈与を使うことにメリットがあるかどうかは個別のケースによって異なります。

    通常、財産を譲り受ける場合は贈与という形を取りますが、贈与税の税率は相続税よりも高いケースが一般的です。ただし、令和4年1月時点においては、毎年110万円までの贈与については贈与税が課税されません

    したがって、一度に同じ価格の財産を譲り受ける場合は、相続税の方が節税できるケースがあります。つまり、生前贈与を行うことによって、毎年、税金がかからない範囲で財産の移動を続けていくことができると言えます。その結果、実際に相続が発生した際に課税される財産自体を少しずつ減らしていくことができるのです。これが、生前贈与を行うメリットと言えます。

  2. (2)生前贈与のデメリット

    生前贈与は、上手に利用すれば相続税の節税につながりますが、使い方を間違えると余計な費用がかかる場合があります。

    生前に贈与を行うことで、余計に発生してしまう税金があることに注意が必要です。たとえば、不動産を贈与する場合、権利変更に伴って登記をするのが一般的ですが、登記をする際に登録免許税や不動産取得税などの諸経費がかかります。長年にわたり、少しずつ贈与をしていく場合は、毎回諸費用がかかる点に注意しましょう。

    また、誤った方法で生前贈与を行ったことによって、相続が始まった時点で相続争いが起きてしまう可能性がある点にも注意が必要でしょう。

3、生前贈与を行う方法について

  1. (1)財産の確認を行う

    生前贈与を検討する場合、まずは自身の財産の確認を行いましょう。現金や預貯金以外にも、相続対象になる財産は複数あります。特に不動産などの固定資産が財産の多くを占める方は、実際のご自身の財産の評価額を知っておくべきでしょう。

  2. (2)贈与契約書を作成する

    生前贈与をする際、あらかじめ契約書を作成しておくことで、生前贈与を行った事実を立証することができます。贈与契約書の書式には明確な規定はありませんが、自署が必要であるなど、効力を発揮させるために守らなければならないポイントがあります。契約書は2通用意し、贈与者と受贈者双方が保管することをおすすめします

  3. (3)生前贈与の注意点

    先述した通り、生前贈与では1年間の贈与額が110万円を超えなければ課税されません。しかし、制度の範囲内で贈与をしていても贈与税が課税されてしまうケースがあります。

    たとえば、10年間にわたって100万円、毎年贈与をした場合、制度上は問題なさそうに感じるでしょう。しかし、「1000万円の贈与を分割払いにした」とみなされて贈与税が課税されてしまう可能性があるのです。このような事態を防ぐためには、年々贈与する金額を調整する必要があります

4、スムーズに生前贈与を行うには?

  1. (1)手続きの手順と利用する非課税枠を確認する

    財産を一覧にして利用する非課税枠と特例を確認します。まず、年間110万円以下の贈与が非課税になるのは基礎控除にあたります。それ以外にも60歳以上の両親から成人した子どもへの贈与が2500万円まで非課税になる相続時精算課税の特例、他にも住宅取得資金贈与の特例、夫婦間贈与の特例などがあります。そして、贈与財産が不動産の場合は登記を行う必要がありますし、相続税の申告が必要になることもあります。自分で手続きすることもできますが、不備がないように専門家に相談することをおすすめします。

    また、相続面での争いを防ぐ目的がある場合は、弁護士のアドバイスを受けながら対応したほうがよいでしょう。さらに、贈与税の非課税措置は、見直しされる可能性が高いものです。常に最新情報を確認することをおすすめします。弁護士と税理士が連携してアドバイスを得られればベストです。

  2. (2)戦略を決定する

    自分の財産に対して生前贈与する相手と財産を決定したら、次は戦略を考えます。先述したように、非課税枠内での継続的な贈与は贈与の分割と判断されて、後々課税される危険性があります。また、相続開始時点から遡って3年以内に法定相続人に対して行われた贈与は相続税に加算されます。

    そのため、贈与契約書を作成して贈与である証拠を残したり、法定相続人以外に贈与することで相続開始時点から遡って課税されないように対策したり、あえて贈与税が課税される額を贈与して贈与の分割と判断されないようにすることもできます。
    法律の運用を間違えると大惨事に繋がりかねませんので、こうした戦略を練る際は専門家に相談することをおすすめします

  3. (3)弁護士や税理士に依頼する

    弁護士に依頼すれば、相続財産の調査や法的手続きを代理で行ってもらえますし、状況に応じて相続の特例や法的対策を提案してくれます。不動産だけでなく証券や貴金属といった財産であっても対応可能ですし、手続きにおいても不備がないため、相談することで適切な生前贈与が実現します。生前贈与をする際は弁護士を頼るようにしましょう。

    特に、相続と税金は切り離せません。税理士と連携を取りアドバイスを受けられる弁護士に相談することで、相続が始まってから家族同士でもめてしまう事態を回避し、節税効果の高い相続や贈与の方法を検討し、提案することが可能です

5、まとめ

多額の財産を相続する予定の方が、何も対策をせずに亡くなると残された相続人が高い相続税を支払うことになります。そのため、生前贈与は相続税対策になると人気がありますが、法律や税金など複雑な判断が必要になるので、専門的な知識がない方が適切に処理するのが難しい手続きでもあります。やはり生前贈与を検討されているのであれば、法律の解釈や運用を間違えないためにも弁護士に相談することをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所 越谷オフィスでも生前贈与の相談を受け付けております。弁護士だけでなく、必要に応じてグループ傘下の税理士とも連携を取りながら相談者様の事情を確認し、最適な生前贈与ができるようサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています